ローマ歌劇場来日公演、ヴェルディ「椿姫」を東京文化会館大ホールにて(18日)。
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
合唱監督:チーロ・ヴィスコ
美術:ネイサン・クロウリー
衣裳:ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、マリア・グラツィア・キウリ、ピエルパオロ・ピッチョーリ
振付:ステファヌ・ファヴォラン
照明:ヴィニーチョ・ケーリ
照明補:ヤコポ・パンターニ
ビデオ:ロレンツォ・ブルーノ、イゴール・レンツェッティ
ヴィオレッタ・ヴァレリー:リセット・オロペサ
フローラ・ベルヴォア:エカテリネ・ブアチゼ
アルフレード・ジェルモン:フランチェスコ・メーリ
ジョルジョ・ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート
アンニーナ:マリアム・スレイマン
ドゥフォール男爵:ロベルト・アックールソ
ドビニー侯爵:マッティア・ロッシ
グランヴィル医師:アンドリー・ガンチェク
ガストン子爵 :エドゥアルド・ニアーヴェ
受託人:ダニエレ・マッシミ
フローラの召使い:マウリツィオ・カッシャネッリ
ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団、ローマ歌劇場バレエ団
ローマ歌劇場の「椿姫」。この舞台、どっかで観たな、と思ったら、2018年のローマ歌劇場来日公演のときも「椿姫」で、やはりソフィア・コッポラ演出、ヴァレンティノ・ガラヴァーニの衣裳であったから当然である(ちなみに座席もほぼ同じ場所だった)。5年ぶりの来日で全く同じプロダクションを持ってくるとは、興行主は本当にリスクを取らなくなったものである。実際、この日の公演は大入り袋が飾られていた。ただ、主役歌手は今回の方が豪華だといえよう。
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そのコッポラの演出は極めてオーソドックスで好感が持てる。特段変わったことは一切せず、第2幕の田舎暮らしのシーンでは、窓の外の田園風景が写真のように美しい。第1幕で右手にある階段が印象的。そしてヴァレンティノの衣裳はさすがにいけている!
指揮はローマ歌劇場音楽監督であるミケーレ・マリオッティ。ソプラノ歌手オルガ・ペレチャッコが妻。この6月東響定期公演に客演したが、残念ながら私は聴いていない。
マリオッティは以前ボローニャ歌劇場の首席指揮者で、2011年の来日公演で聴いているのだが、そのときはオケと合唱がズレズレでどうもあまりいい印象がなかった。
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今回久しぶりに彼の指揮でオペラを聴いたわけだが、ボローニャのときほどではないにせよ、合唱のズレが気にならないこともない…オーケストラの表現に細部まで非常にメリハリをつけていて、テンポもかなり独特な揺らし方をしていてこれはそれなりに面白かったのだが、やや作為的な印象も残った。
今回のタイトルはキューバ系アメリカ人のリセット・オロペサ。椿姫にふさわしい美人歌手である。高域で若干揺れるところもあったが、くもりがない明瞭で華やかな声。第1幕エンディングの慣例の三点変ホ音は完璧に決めた!ただ、第3幕はあまり感情移入できず、手紙のシーンもあまり来るものがなかった。
本公演の私の一押しはやはりメーリ!6月のテアトロ・マッシモ劇場来日公演でもアルフレードを歌ったばかり。
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この人、見た目は地味であるがその声は抜けるようによく伸びる。ややシックで上品な声質なのがいい。アルフレードはあまり賢い役ではないが、メーリが歌うと上品さが備わるのだ。
ジョルジュ・ジェルモン役はモンゴル人歌手のアマルトゥブシン・エンクバート。舌を噛みそうな名前だ。この公演の前日に最終回を迎えたTBS日曜劇場VIVANTでモンゴルという国がさらに身近になっていたところである。エンクバートの声は深みがあるが、年齢ゆえか声にまだ若さが残っていて、この役としてはさらに包容力がほしかったところ。
合唱はマッシモ劇場同様、イタリアの強烈な陽差しを思わせる力強さと素朴さがある。オーケストラも同様。ただ、オーケストラに関して言えば、マッシモよりは洗練されていると思った。
ピットのホルン奏者が「スター・ウォーズ」レイア姫のテーマを吹いたり、ブラームスのピアノ協奏曲第2番の冒頭を吹いたりしていたし、フルート奏者はモーツァルトのフルート協奏曲を吹いていた。こういうのも聴いていて面白い。
今回、第2幕第1場と第2場の間に休憩があったが、これはよかった。第2幕はどうしても長く感じられるからである。
15時開演で休憩が3回(25分、20分、20分)で終演が18時半過ぎ。
総合評価:★★★★☆