ルツェルン音楽祭2023 ウィリアム・クリスティー指揮レザール・フロリサンの演奏会を、KKLルツェルン・コンサートホールにて(9月4日)。

 

舞台演出:ムーラ・メズキ

ソプラノ:パウリーナ:フランシスコ

メゾソプラノ:ジョルジア・ブラシュコ、レベッカ・レゲット、ジュリエット・メイ

テノール:イリヤ・アクシオノフ、ロドリーゴ・カレット

バリトン:ヒューゴ・ハーマン=ウィルソン、ベンジャミン・シルペルート

 

ダンサー:サミュエル・フロリモンド、アナヒ・パッシ、アラリー・ラヴィン、ティモシー・ツィグ、イアン・デボノ、ジョイ・ガーフィン

 

パーセル:妖精の女王

 

前日のハイドンに続いて苦手意識があるバロック・オペラ。早世した英国の作曲家、ヘンリー・パーセル(1659?〜1695)がシェイクスピア「真夏の夜の夢」の劇付帯音楽で、シェイクスピアの作品とは直接関係のない内容となっている。

全5幕から成る「仮面劇」で、事前に日本語の対訳を読んだが結局のところストーリーがあるわけでもなく、よくわからなかったのだが、今回の上演、ダンスと音楽だけで十分楽しめる内容であった。字幕板が設置されていたのでラッキー!と思いきや、字幕はドイツ語のみ。歌詞が英語なのだから英語字幕は不要、ということなのだろう…ザルツブルク音楽祭だと英語の字幕も出るはずだが。

 

8名の歌手、6名のダンサーによるステージがオーケストラの前に設置され、ダンサーたちのキレがあるストリートダンス、バク転したり、逆立ちしてくるくる回ったりと、通常クラシックのステージでは観ることができない類のダンスだ。これ15世紀のパーセルの音楽に重ねても違和感がなかったのがすごい。

8人の歌手たちは、クリスティー&レザール・フロリサンによるプロジェクト「ル・ジャルダン・デ・ヴォワ」2023の若手歌手たち。私が知っている名前は一人もいないが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのソニア・ヨンチェヴァもこのプロジェクト出身だそうだ。その8人、ダンサーたちと一緒にコミカルな演技もしたうえに、非常にレベルが高くみずみずしい歌唱を披露してくれた。

 

11月に来日してバッハ「ヨハネ受難曲」を演奏する予定である、ウィリアム・クリスティー指揮レザール・フロリサン。クリスティーは米国生まれでフランスを拠点に活動する古楽系指揮者で現在78歳。

パーセルはバッハ以前の作曲家で、人が共感できる音楽を書いた唯一の作曲家だと三枝成彰が言っていたように記憶するが、まさにこれだけ情感あふれる音楽が15世紀に書かれていたのは驚きである。なんという美しい音楽なのだろうか…?ゆったりしたテンポで、フレーズの繰り返しの多いところでは気持ちよくて眠くなってしまう。レザール・フロリサンの典雅な響き、リュートをはじめ弦楽器のやや乾いたピツィカートは実に耳に心地よい。わずか20数名であれだけ力強い音楽が奏でられるのも不思議。

 

パーセルが全く古い音楽でないことを痛感させられる公演であった。

19時半開演、25分の休憩を第3幕の後にはさみ、21時45分頃終演。

 

総合評価:★★★★☆