ルツェルン音楽祭2023 パドヴァ・ヴェネト管弦楽団の演奏会を、KKLルツェルン・コンサートホールにて(9月3日)。

指揮&ヴィオラ:ヴォルフラム・クリスト

バセット・クラリネット:ザビーネ・マイヤー

 

イェルク・ヴィトマン(1973〜):夏の最後の薔薇(ヴィオラと小オーケストラのための別れの歌)

モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調K.622

シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」D.797〜第3幕間奏曲

シューベルト:交響曲第3番ニ長調D.200

 

1978年〜1999年までベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者を務め、ルツェルン祝祭管の常連であったヴォルフラム・クリストのヴィオラと指揮による演奏会。この演奏会をもって、クリストはソロ活動から引退するということだ。

 

そのクリストのソロ活動引退に際して、ヴィトマン作品の初演。別れの歌である。クリストの弾き振りによる演奏。なんと、カラヤン時代から活躍していたクリストのヴィオラ・ソロの最後を聴けるとは…

ヴィトマンはトッパンホールにも来演しているし、最近あちこちで名前を聞くことが多い現代作曲家兼クラリネット奏者である。今回の作品を聴いて、彼が人気なのもなんとなくうなずける気がした。単なる現代音楽ではなく、美しい旋律あり、懐古趣味的なワルツありで、親しみやすく、かといって陳腐でもないところが受けているのかもしれない。こういう曲だと、もう一度聴いてみたい、と思うものだ。

 

2曲目はドイツの女性クラリネット奏者、ザビーネ・マイヤーをソリストに迎えたモーツァルトの協奏曲。ザビーネ・マイヤーもクリスト同様、ルツェルン祝祭管の常連である。

ザビーネ・マイヤー事件といってわかる人もだいぶ減ってきたかもしれないが、あれからもう40年以上経っているとは…月日が経つのは早い。彼女のクラリネットを聴くのは、2006年のポリーニ・プロジェクトでの来日以来である。

すでに60代だが、昔から変わらず、すらりとした美人である。先日亡くなったベルリン・フィルのヴィオラ奏者で、マイヤーとの室内楽共演もある故土屋邦雄氏が、「遠目に見ると美人」とドキュメンタリーで言っていたのを覚えているが…

彼女は今回、長細いバセット・クラリネットを用いて演奏。モーツァルトのクラリネット協奏曲、バセット・クラリネットでないと出ない音があるそうだ。ザビーネ・マイヤーの音色は、楽器のせいかもしれないが割とすっきりしてクセがない音色。逆に言うと、ふっくらとした柔らかい音とはちょっと違うので好みは分かれるかもしれない。

 

休憩なしで続けて演奏されたのは、シューベルトのロザムンデ間奏曲。確か、最初はヴォルフガング・リームによるヴィオラとオーケストラのための新作、と書いてあったような…ここでこの間奏曲が演奏されるのはやや唐突か。まあ間奏曲だからいいのであるが、ちょっと違和感がある。

最後に演奏されたのはシューベルトの3番。クライバーの名盤でよく知られた、快活な曲である。クリストは実に楽しそうに、生き生きと指揮をしていたし、この曲が持つイタリア的な明るさは、まさにイタリアのオケにぴったりであった。

 

さてオーケストラはイタリアのパドヴァ・ヴェネト管。初めて聴くオーケストラだと思ったら、なんと2004年、アシュケナージとの来日公演(おそらく、今はなき都民劇場音楽サークルの一環だと思う)を聴いていた。正直、何も覚えていない。

この日の弦は8-6-4-4-2という小編成だったが、なぜこんな小編成なのに濃くて太い音がするのだろうか?日本のオーケストラでこの編成だと、人数そのままの小さくまとまった音になってしまうのであるが…パドヴァ・ヴェネト管の弦はきっちりそろっているということは全くなくて、各人の個性そのままに、お互いの音楽性を尊重しあっている、そんな演奏なのだ。

 

日曜日朝11時開演、休憩なしで12時25分終演。外は割と暑い。

 

総合評価:★★★☆☆