フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023読売日本交響楽団を、ミューザ川崎シンフォニーホールにて。
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ(読売日本交響楽団 常任指揮者)
ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャー
読響常任指揮者であるドイツの名匠、バイロイト音楽祭でもタクトを執ったヴァイグレがワーグナーを振る。これは、やはり行かないわけにはいかないだろう。しかし、完売公演が多いフェスタサマーミューザのなかで、本公演は割と空席があった。
ヴァイグレと読響、定期公演などの自主公演でかなりハイレベルの演奏を聴いてきたのだが、本公演はそこまでの水準には至っていなかった。主催公演でないとこんな感じなのだろうか。メンバーも、気のせいかエキストラが多かったような…
前半は12型によるベートーヴェン8番。小編成にしては機敏さがなく、かといって昔の巨匠風のスケール感もなく、ちょっと中途半端な印象の演奏であった。たまたま先日、カラヤン指揮ベルリン・フィルによる2回目の録音(1970年代、フィルハーモニー)を聴いて、その音の抜けの良さとずっしりした手触りに触れて、そういうタイプの演奏を期待してしまったのがいけなかったか。ヴァイグレと読響のベートーヴェンは3、9、5、7と聴いてきたが、この8番は一番インパクトが弱い。
後半はオランダ放送フィルの打楽器奏者、ヘンク・デ・フリーヘルが編曲したリングのオーケスストラ編曲版。すでに、コンサートでの地位を確立した編曲版と言っていいだろう。全曲演奏に4夜かかる長大な楽劇の聴きどころを、わずか70分(CD1枚分)に短縮して演奏会用にしたものである。日本のオーケストラでもすでに何度か演奏されていて、私が聴いた範囲では
2009年 デ・ワールト指揮N響
2011年 アルミンク指揮新日本フィル
2014年 ウィグルスワース指揮東響
がある。そして、今年9月にもルイージ指揮N響のC定期で採り上げられる予定。
さて久々にフリーヘル編のリングを聴いて、やっぱり私はこの編曲が苦手であると再確認した。70分のうち多くが「ジークフリート」「神々の黄昏」に偏っている。「ワルキューレ」など、いきなりワルキューレの騎行から始まって、第1幕は全く出てこない。同じく70分にまとめたロリン・マゼール編曲版の方が、さすがオペラを熟知した敏腕指揮者ゆえ聴き応えがある。
16型オケ、ドイツの名匠ヴァイグレが振るということで期待したワーグナーだったが、少々がっかりだった。音にうねりがなく軽めで重厚感がなく、オケは全般的にやや粗い。このコンビで素晴らしいドイツ音楽を何度も聴いているので、このワーグナーはちょっといただけない。まあ編曲のせいもあるだろうが。
指環は原曲を聴くのが一番いいのは間違いないのだが、編曲版で言うと、例えば「ジークフリートのラインの旅」などは、トスカニーニ指揮NBC響のあの直線的にぐいぐいと進んで行く音楽の印象があまりに強烈だ。あれは編曲がフンパーディンクのはず。
コンマスは日下紗矢子さん、オーボエは先日東響を退団した荒木さん(読響契約団員)。
総合評価:★★☆☆☆