新日本フィルハーモニー交響楽団第650回定期演奏会サントリーホール・シリーズ。

 

指揮:シャルル・デュトワ

 

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1919年版)

ベルリオーズ:幻想交響曲 op. 14

 

前週の大阪フィルに続いて、新日本フィルにデュトワが登場。ご覧の通り、彼の十八番と言うべき曲が並んでいる。

 

まずは後半の幻想から。これには心底驚いた。86歳にしてここまで鮮やかな指揮ができる指揮者が他にいるだろうか?昔のデュトワに比べるとわずかに重くなっているが、いったい手が何本あるのだろうと思わせるぐらいに細やかで多彩な動きは健在、ときとしてウンッ、と唸って力むところなんかも、昔と全く変わらない。トータルの演奏時間は55分程度で、モントリオール響やフィルハーモニア管との録音のときと変わっていない。

4日間にわたる厳しいリハーサルの成果であろう、弦の艶やかな音やハーモニーの軽やかな美しさには、いつもより磨きがかかっていたように思われる。どのオーケストラを振っても、デュトワの「幻想」なのだ。

デュトワという指揮者は音楽のフォルムが基本的に決まっていて、どの演奏を聴いても彼の音楽になっていることが多いのだが、今回驚いたのはグロテスクなまでに低音の弦楽器を強調していたことだ。第1楽章提示部のリピートが2回終わって展開部に入ってすぐのチェロとコントラバスのスフォルツァンドをあれほど強調していたのは驚き。私は今回を含め、通算でデュトワの幻想を6回聴いてきた(N響2,フィラデルフィア管1、ボストン響1、大阪フィル1)が、おそらくここまで強調したのは初めてだと思う。

 

前半1曲目は「牧神」。N響で聴いたことがあるかと思っていたが、デュトワの牧神を聴くのはなんと1999年のモントリオール響来日以来だった。あのときのハッチンス(Fl)、ジーベル(Hr)の素晴らしい音色の記憶を頭から消せない私がいけないのかもしれないが、新日本フィルの木管群はやや精彩を欠いていたように思う。驚いたのは、この曲に限ってデュトワは指揮棒を使っていなかったこと。指揮棒を持たないで指揮するデュトワを見た記憶が全くないのだが…。この曲は14型(他は16型)。

続いて演奏された火の鳥もデュトワにとってはお手の物だ。こちらもオーケストラの音がデュトワの音色になっていて、各楽器の音色がしっとりとした音に統一されていたように思う。

 

大物デュトワの登場ということでチケットは完売。ソロ・カーテンコールは2回あった。

次はいつ来日してくれるだろうか。本当に、いつまでも彼の指揮する音楽を聴きたいものである。

 

総合評価:★★★☆☆