ラ・フォル・ジュルネ東京2023、5月5日公演のまとめ。

 

【公演番号223】15時半〜 ホールC

巨きさと気品と。べートーヴェンが恩人に捧げた偉大なる名曲

萩原麻未 (ピアノ)

神尾真由子 (ヴァイオリン)

横坂源 (チェロ)

 

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 op.97 「大公」

 

うーん…大公トリオって、こんなつまらない曲だったっけか??

日本を代表する名ソリストが3人集まって演奏しているのに、こういう超安全運転の演奏を聴くと、リハーサルの時間が極端に少ないのではなかろうか?と思ってしまう。

常設団体ではなく、普段別の活動をしている音楽家が集まって室内楽をやる場合、感動的な演奏になるのはなかなか難しいのは確かだ。しかし、例えばマルタ・アルゲリッチぐらい強烈な個性の人が一人いるとまわりの音楽家がその個性に引っ張られ、そして感化されてすごい名演になることがあるし、各音楽家の個性がぶつかってバチバチと火花が散るようなエキサイティングな名演が生まれることだってある。

今回の演奏、私はかなりステージ目の前に近いところにいてソリストたちのダイレクトな音を聴いていたにもかかわらず、全く熱量が感じられなかった。誰一人として音楽をリードせずに、表面的にただただきれいに演奏しただけだ。もう一度言うが、つまらない演奏だった。

 

総合評価:★★☆☆☆

 

【公演番号214】 18時〜 ホールA

幻想と詩情の協奏曲

 

毛利文香 (ヴァイオリン)

アンヌ・ケフェレック (ピアノ)

東京交響楽団 (オーケストラ)

齋藤友香理 (指揮者)

 

ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第1番 ト長調 op.40

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58

 

前日の弦楽五重奏版に続き、2日連続でケフェレックの香り高い協奏曲第4番を聴く。今回はオリジナルのオーケストラ伴奏。

前日はホールCで割とステージに近かったが、今回は巨大なホールAの19列目(これでもこのホールの中ではまだいい方である)。ということで、ピアノの音の輪郭がやや甘い。とはいえ、オリジナルのオーケストラ伴奏で聴くこの曲はやはり最高だ。ケフェレックのピアノのできばえ自体は前日の方がよかったような気がするが、気品あふれる表現はこの曲にぴったり。それにしても、モニターで見るケフェレック、やはりおばあちゃんになったな…

1曲目に演奏されたロマンス第1番、ヴァイオリンを弾いたのは毛利文香。ホールのせいだろうけれど線はかなり細めに聞こえてしまう。まあ、今回の演奏だけでは評価しようがないだろう。

 

オーケストラは1曲目が10型(Cb3)、2曲目が12型(Cb5)。5,000人入る巨大ホールAでこの人数とは…と思ったのだが、このホールの音はPAで増幅しているのかもしれない。齋藤友香理の指揮は非常に丁寧だと思ったが、今回の演奏だけではなんとも評価しようがない。オーボエ首席はN響の𠮷村結実さんが客演。

 

総合評価:★★★☆☆