NHK交響楽団第1982回 定期公演 Bプログラム2日目を、サントリーホールにて。

 

指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ

ピアノ : マリー・アンジュ・グッチ*

 

シベリウス/交響曲 第4番 イ短調 作品63

ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*

(ソリスト・アンコール)

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲からカデンツァ

 

チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32

この4月の定期で、前首席指揮者であるパーヴォ・ヤルヴィが振るN響を聴くのは2021年9月以来ということになる。首席指揮者時代、N響との演奏は徐々にマンネリ化していって、上手いけど感動できないというものが多かったのだが、今回の演奏は実に見事なものであった!パーヴォが首席指揮者に就任したばかりの頃の、あの切れ味が良いサウンドが戻っていたのは実に嬉しい。非常に引き締まった造形美が感じられ、オーケストラの鳴りが非常によいのである。

 

前半はパーヴォが得意とするシベリウスの、最も難解な4番。この難解な作品が、非常に説得力を持って心に響いた。冒頭のチェロとコントラバスの深く強靱な音もいいし、ピアニッシモにおける研ぎ澄まされた静寂は、ホールに誰も人がいないような感覚さえ覚える。味わい深いチェロのソロを弾いたのはエキストラで、元神奈川フィルの首席であった門脇大樹氏。オケは14型で密度が濃いながら非常に繊細な響きであった。

 

後半1曲目はラフマニノフの「パガ狂」、ソロはアルバニア出身のマリー・アンジュ・グッチ。名前からしてイタリアの名門ブランドの出身?と思いきや、姓の綴りはNguciである。昨年惜しくも急逝した米国の名ピアニスト、ニコラ・アンゲリッシュの弟子だ。

その彼女が弾くラフマニノフ、非常に自信に満ちたタッチと完璧なテクニックで、かつ華麗さもあるが過度にセンティメンタルにならず感情表現が安定しているのがいい。こんなに素晴らしいピアニストがいたとは知らなかった。全ての音がクリアに聞こえていて、14型に縮小したオケも、今まで聴いたことがなかったような音が聞こえてきて面白かった。

グッチがアンコールで弾いたのは、なんとラヴェルの左手のための協奏曲のカデンツァ。めちゃくちゃ得した感あり!この長大なカデンツァ、静かに始まってやがてクライマックスに達するまでの表現、なかなかペース配分が難しいはずなのだが、これがまた実に見事な表現だったのだ。彼女のソロ・リサイタル、残念ながら行けないのだが次回の来日のときはぜひリサイタルに行ってみたい。

 

最後に演奏されたのは16型に戻ってチャイコフスキーのフランチェスカ・ダ・リミニ。ロメオとジュリエットに比べるとあまりなじみのある曲ではないが、ドラマティックで壮大な音楽で、パーヴォらしい造形美と、計算されよくコントロールされたバランスが見事である。エンディングは実に壮大で感動的であった。

 

ピアノのアンコールがあったのと、その後の舞台転換のせいか、終演は21時10分を回っていた。オケ、ホルン首席は東響の上間氏、3番は、その東響で先日エキストラ首席を吹いていた藝大フィルの庄司氏。

 

総合評価:★★★★☆