コリン・カリー・グループ ライヒ《18人の音楽家のための音楽》を、東京オペラシティコンサートホールにて(21日)。
コリン・カリー(パーカッション/指揮)
コリン・カリー・グループ
シナジー・ヴォーカルズ
スティーヴ・ライヒ:
ダブル・セクステット(2007)
トラベラーズ・プレイヤー(2020)[日本初演]
[オランダ公共放送アムステルダム土曜マチネ、サウスバンクセンター、カーネギーホール、フィルハーモニー・ド・パリ、ハンブルク・エルプフィルハーモニー、バークレー・カルパフォーマンス、東京オペラシティ文化財団 共同委嘱]
18人の音楽家のための音楽(1974~76)
2017年に続いて、英国のコリン・カリー・グループとシナジー・ヴォーカルズが来日してライヒ作品を披露。前回は「テヒリーム」だった。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12252507158.html
今回はライヒの傑作「18人の音楽家のための音楽」である。
まずはその後半。これは本当にすごかった!!これほどまでに色彩感に富んでいて、緻密なグラデーションが描かれている音楽を、わずか20名の程度のプレイヤーたちで演奏しているとは…凡庸な例えをすれば、1時間ハイウェイをドライブしているような感覚で、美しい山が見えたり、海が見えたり、地平線が見えたり…と、徐々に美しい風景が変化していくかのような錯覚に陥るのである。
ライヒ自身による詳細な楽曲解説がプログラム・ノートに記載されているのだが、 内容が結構難しくて途中で挫折。音楽の潮目がある瞬間にふっと変わって、3拍子が2拍子になったり、6拍子になったりするのだが、気付いたのは、バスクラを吹く女性がすっと立ち上がる瞬間が2回あったこと。誰かが、なんらかの合図をしているらしい。
ステージの上の様子を見ていると、打楽器奏者は順次楽器を替えて交代し、ときどき休みを取っているようだ。さすがに1時間あのリズムをぶっ通しで演奏するのは辛かろう。私の席は1階センターで、ステージ上の動きが見えないことはなかったが、これはバルコニーから見下ろしていた方が、奏者がどう交代してどんなフレーズを演奏しているかが見えて、さらに面白かっただろう。
それにしても奏者たちの集中力は半端ではないと思う。指揮者なしであれだけの水準はすごい。そして、いったいどうしてこういう音色が生まれるのだろうかという不思議な錯覚に陥る瞬間がいくつもあった。
ちょっと残念だったのは最後の余韻があまりないままに拍手が起きたこと。もうちょっと長い余韻を味わいたかったところだ。
前半はコリン・カリーが指揮。1曲目は12名の奏者で演奏されるダブル・セクステット。この曲はライヒらしいミニマル音楽。1曲目ということもあって、心地よくて眠たくなってしまった…
2曲目「トラベラーズ・プレイヤー」は2020年の作品で、ちょっとライヒの従来のリズミカルなイメージとは全く違ったテイストの、静謐な音楽。ヘブライ語の祈祷書からの抜粋が歌詞となっている。といっても、歌詞は聞き取れなかったのだが。前島秀国氏のノートによれば、ライヒはもともとある歌詞に音楽を付けるときは、その歌詞の内容と伝えることが重要だと考えているようで、そのためライヒの通常の作品のイメージと異なる作風になっているのかもしれない。
2017年のときもそうだったが、客層がいつものクラシックとは違っていてやや年齢層が低く、タイプが違う。後半が終わってすぐ、ほぼ聴衆総立ち状態となったし、喝采も全然いつもと違うのだ。
2017年には来日していたスティーヴ・ライヒも今や86歳ということで、今回は来日しなかった。残念だが高齢ゆえ仕方なかろう。
今回、NHKのカメラが入っていたようだ。ヴォーカルはマイクとPAを使用していたこともあり、音声のチェックが舞台転換のたびにかなり入念に行われていた。そんなこともあり、終演は21時20分過ぎ。
ライヒの音楽、9月にはびわ湖ホールで「ドラミング」が演奏されるらしい。
総合評価:★★★★★