ジャン=エフラム・バヴゼ  ピアノ・リサイタルを銀座のヤマハホールにて。

 

C.ドビュッシー/バラード(スラヴ風バラード)

F.ショパン/バラード 第2番 ヘ長調 Op.38

C.ドビュッシー/マズルカ

F.ショパン/マズルカ 第19番 ロ短調 Op.30-2

C.ドビュッシー/ロマンティックなワルツ

F.ショパン/ワルツ 第12番 へ短調 Op.70-2

C.ドビュッシー/スティリー風タランテッラ

F.ショパン/タランテッラ 変イ長調 Op.43

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P.ブーレーズ/「12のノタシオン」

C.ドビュッシー/12の練習曲 第1巻

(アンコール)

マスネ/トッカータ

ドビュッシー/喜びの島

 

1962年生まれフランスのピアニストであるジャン=エフラム・バヴゼによる素晴らしいプログラムの公演。ショパン、ドビュッシーを中心に、当初はブーレーズのノタシオン第7番だけが演奏される予定だったのだが…なんと、12のノタシオン全曲が演奏されることに!

しかも、演奏前にバヴゼ自身が解説までしてくれたのだ。確かに、それでも全曲演奏が終わったのは20時45分頃だったから、当初のプログラムが短かったのかもしれない。

 

久々のヤマハホール、当然ながらピアノはヤマハであるが、このホールにあるということは当然ながら同社のピアノでも最高の状態にある楽器のはずで、昨年ピレシュのサントリーホールの公演で聴いたときのような低音の不足感はなく、前音域にわたって非常に豊かに響く素晴らしいピアノであった。もちろん、バヴゼのような名手が弾くのが前提であろうが。

 

前半はドビュッシーとショパンの似たテイストの曲が交互に続けて演奏されたが、こうして交互に聴いてみると、この二人も意外に似たところがあるなと不思議な感覚になる。前半最後に弾かれたタランテッラが圧巻で、バヴゼのタッチはかなり強靱で情熱的だ。

 

後半1曲目巨匠ブーレーズが19歳のときに作曲したノタシオン全曲。まず、バヴゼが英語でノタシオンの解説をした。バヴゼの解説は通訳を介してはいたが、かなりわかりやすい英語だった。この曲の最初と最後は同じフレーズだとか、旋律が回文になっているとか、この部分がカノンになっているとか、なかなか自分ではとても分析できない内容。面白かったのは、回文になっているところでバヴゼが譜面に誤りを見つけてそれをブーレーズ本人に指摘したところ、ブーレーズがその誤りを認めたというものだった。もう1箇所誤りを指摘したが、そちらはオーソライズされなかったとのこと。

さて譜面を見ながらの全曲演奏、研ぎ澄まされた響きと強靱な不協和音が交差する見事なものであった。こうして全曲を聴くと、音楽史上、ブーレーズがドビュッシーの延長線上に位置付けられることがよくわかる。その後にドビュッシーの12の練習曲第1巻を並べて聴くと、ドビュッシーの前衛性もよくわかるのであった。それにしても、練習曲とはいえ、普通のピアノ練習者には、1曲目の冒頭以外あまりに難しすぎる音楽である。

 

アンコールの1曲目はマスネのピアノ曲。マスネにピアノ作品があるのも知らなかったが、これは古典的な様式のなかに鮮やかな色彩が感じられる名作だ。アンコール2曲目はL'Isle joyeuse!!この日のプログラムで、唯一よく知っている曲だったのだが、最後の最後で大変な高揚感。思わずブラヴォーを叫んだ。

 

総合評価:★★★★☆