NHK交響楽団第1977回 定期公演 Aプログラム1日目をNHKホールにて。

 

指揮:尾高忠明

チェロ:宮田大

 

尾高尚忠/チェロ協奏曲 イ短調 作品20

(アンコール)瀧廉太郎/荒城の月

パヌフニク/カティンの墓碑銘

ルトスワフスキ/管弦楽のための協奏曲

 

正直あまり期待していなかった演奏会なのであるが、予想外に満足感が高い公演となった。その理由は前半の尾高尚忠のチェロ協奏曲。これは驚きの発見!

尾高尚忠(1911〜1951)が1943年、まさに大東亜戦争の真っ最中に作曲したチェロ協奏曲、事前にネットで予習したときはそれほどぴんと来なかったのだが、今回の実演は実に素晴らしいものであった。とにかく、宮田大のチェロが熱く雄弁で、本来彼が持つ瑞々しい音が年齢を加えて更に熟したいい音に成りつつあって、非常に聴き応えがあったのだ。

そして、作曲者の息子である尾高忠明の指揮は言うまでもなく共感にあふれていて、尾高氏らしい上品さがそこかしこに感じられる。非常に生き生きとしていて、メリハリに富んだ素晴らしい演奏だ。

尾高尚忠といえばフルート協奏曲が非常に有名だが、このチェロ協奏曲、日本的な旋律が各所にちりばめられつつ、ウィーンに留学した尾高らしいロマンティックな作風。演奏時間38分程度で、ちょっとテイストは違うけれどドヴォルザークのチェロ協奏曲に匹敵すると言ったら言い過ぎか?たぶん言い過ぎなんだろうけれど、もっと演奏されて欲しい佳曲である。余談ながら、尾高尚忠は渋沢栄一の孫に当たる人だ。

オケは14型。私がいる3階席でも、宮田大のチェロは14型オケを突き破って非常に朗々と鳴り響いていた。

アンコールは荒城の月。全くの余談だが、この曲の歌詞で「花の宴」の「え」の音、瀧のオリジナルでは西洋風にシャープがついているが、このシャープを削除したのは編曲した山田耕筰であり、通常は「え」の音はシャープを削除して演奏される。

 

後半はポーランドの作曲家2作品。前半の尾高を含め3人とも同世代の作曲家である。

後半の演奏はまあ、いつものN響の高水準の演奏というところではある。ちなみにこの後半の2曲、2008年5月の尾高氏によるN響定期公演と全く同じだ。

パヌフニクでは木管の強い意志が感じられる音色が見事。14型。

大好きなルトスワフスキの作品、N響奏者のレベルは極めて高いのだが、この曲のエキサイティングなキレキレ感は尾高氏の落ち着いた指揮によってやや後退していた。この曲、演奏効果は極めて高いが、曲の構成や全体のバランスを上手く聴かせるのはそれなりに難しい曲なのだろうと思う。16型。

 

NHKホールの改装工事が終わって、N響A・C定期は今シーズンになってからNHKホールに戻ってきているわけだが、私が観る限り、どうもNHKホールの客の入りは改装前に比べて減っているような気がする。特に今回のようなプログラムだと客の入りはさらに悪い。

 

総合評価:★★★☆☆