ラン・ラン ピアノ・リサイタル 2022を、サントリーホールにて。

 

シューマン:アラベスク ハ長調 op.18

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988

(アンコール)

中国民謡: 茉莉花

ブラームス: ハンガリー舞曲第5番(奥様のジーナ・アリスと連弾)

A.メンケン: 映画「アラジン」から ホール・ニュー・ワールド

R.B.シャーマン&R.M.シャーマン: イッツ・ア・スモール・ワールド

 

ラン・ラン、2019年にパーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管来日公演でソロを弾いて以来の日本でのコンサート。ソロ・リサイタルは6年ぶりとなる。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12226358138.html

今回は休憩なしで、冒頭に10分足らずのシューマンのアラベスク、それに続いて、ゴルトベルク変奏曲というかなり通好み(のはず)のプログラムである。

ラン・ランのゴルトベルクはすでにドイツ・グラモフォンからリリースされているが、演奏時間なんと90分!

今回、ラン・ランは90分のゴルトベルクを暗譜で完璧に弾き切った。さすがである。各変奏の前半・後半ともに基本全てリピートして90分なので、テンポが遅いわけではない。そして、それぞれのリピートごとに強調する声部やフレージングを変えていたので、聴いた印象として単純なリピートではなく、非常に多彩で華やかな音楽になっていたのである。そのようなわけで、90分(少なくとも私は)退屈することなく聴くことができた。

かつて、ラフマニノフなど派手な曲はいいものの、独墺系の作曲家では違和感が感じられたラン・ランだったが、今やそのようなことはないような気がする。今回のバッハ、音が研ぎ澄まされて洗練されているのは非常に現代的かつ都会的である。これは冒頭に弾かれた短いシューマンでも同じ印象だった。

ゴルトベルク、第何変奏だかすぐわからないが、ちょうど中盤の変奏曲のエンディングでかなり強烈に打鍵したものだから、それ以降調律が少し乱れてしまっていた。

 

6年ぶりのソロ・リサイタル、ラン・ランの成長がよくわかる極めて高水準の演奏だった。客席はほぼ満席。しかし、演奏水準の高さに反して、マナーの悪い聴衆が多いのに呆れかえってしまった。

招待客なのか、小さい子供と母親という親子連れが非常に多く、特に私が座った席の隣のブロックには何組もいて、開演前から嫌な予感がしていたのだがそれは的中。音を立ててペットボトルの水を飲むわ、演奏中ずっとひそひそ話するわ、落ち着きなく動くわ、前後の客は最悪だっただろう。だいたい休憩なしの90分超えるゴルトベルクに、そもそも大して興味もない子供がじっと聴いていられるわけもなく、こういう演奏会に小さい子供を連れてくるのは単なる親のエゴ。ウィーン・フィルやコンセルトヘボウでもこのような親子連れがいるが、そばにいると本当に迷惑である。その手の親子連れが会場そちこちにかなりいたと思われ、ゴルトベルクの後半になるにつれ退屈している感が会場に満ちていた。

その上…ゴルトベルク変奏曲の最後の静かなアリアの最中に、ステージのすぐそばでなんとスマホのアラームがけたたましく鳴ったのである!…ここで私の殺意も頂点に達した…客層が悪すぎる。

 

ゴルトベルク終了後、ラン・ランが1曲目のアンコール曲名を言ったときに会場から歓声が起きた。ものすごいアウェイ感…この民謡、プッチーニの「トゥーランドット」で使われているということか。

2曲目は超美人ピアニストの奥様、ジーナ・アリス(中華系だと思っていたが、ドイツと韓国のハーフだそうだ)との共演。これはちょっと予想していた。

その後はラン・ランがニュー・アルバム(ディズニー・ブック)からと言ってiPadを持ってきて超華麗な演奏。子供連れの多さがここでわかったような気がした。

 

総合評価:★★★★☆