アルゲリッチ&フレンズ イヴリー・ギトリスへのオマージュ、再び を、すみだトリフォニーホールにて。
モーツァルト
4手のためのピアノ・ソナタ ニ長調K.381
(ピアノ:マルタ・アルゲリッチ&海老彰子)
フォーレ
ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 op.13
(ヴァイオリン:村田夏帆 ピアノ:海老彰子)
フランク
ヴァイオリン・ソナタ イ長調
(ヴァイオリン:辻󠄀彩奈 ピアノ:マルタ・アルゲリッチ)
シューマン
ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
(ピアノ:マルタ・アルゲリッチ 弦楽四重奏:カルテット・アマービレ)
(アンコール)
シューマン: ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44 第3楽章から (後半部分)
6月にクレーメルとともにリサイタルを開き、素晴らしい演奏を聴かせたばかりのアルゲリッチ。今回は、日本人の仲間たちとのリサイタル、素晴らしいプログラムである。
ギトリスへのオマージュとあるが、そういえばこのホールで、ギトリスとアルゲリッチのリサイタルを2000年に聴いたのであった(その頃、ギトリスのヴァイオリンはすでにかなり怪しくなっていたが)。
さて今回も81歳になったアルゲリッチの切れ味鋭い音楽は健在で、他の演奏家に強烈なオーラを放ち、そして驚くべき化学反応を起こした結果、素晴らしい演奏となった。
共演者はアルゲリッチと共演が多い海老彰子、2007年生まれ(!)の村田夏帆、飛ぶ鳥を落とす勢いのヴァイオリニスト辻彩奈、そしてARDミュンヘン国際コンクール弦楽四重奏部門第3位のカルテット・アマービレ。共演者は、アマービレのチェロ笹沼氏(でかい!)を除き全て女性である。
1曲目は海老彰子との連弾、アルゲリッチが下側(セコンド)。非常にはつらつとしていて前のめりで、豪快なイメージだ。アルゲリッチはこの曲をアレクサンドル・ラビノヴィチと録音しているが、実にアルゲリッチにふさわしい明るくダイナミックな音楽である。
2曲目、フォーレのソナタを弾いたのは2007年生まれの村田夏帆。ステージに登場して驚いたが、正直、あどけない少女である…しかしヴァイオリンの音を聴いてびっくり。音が完全にできあがっていて、未完成な部分がないのである。音はとてもしなやかでていねいだが、まあさすがに人生経験がそこまでないわけで、音楽に深みが出るのはまだまだこれからであろう。ちょっと後半、眠くなってしまったのは事実。
この日、個人的に最高だったのはフランクのソナタ。辻彩奈のヴァイオリンがあまりに素晴らしい。明快で堂々たる風格の音色、完璧な音程、見事な感情表現。そして、大御所アルゲリッチを前に全く臆することのない自由な表現。まさに、火花が散るようなデュオである。アルゲリッチは第2楽章と第3楽章の間のパウゼを入れずほぼ連続して演奏した。
後半はシューマンの傑作、ピアノ五重奏曲。カルテット・アマービレの若く初々しい響きと、アルゲリッチの円熟した表現のぶつかり合いが非常にいい。ステージを見ていると、アルゲリッチが若いカルテットの面々の作り出す音楽に合わせようとする姿勢が見られる。こちらも、フィナーレではバチバチと火花が散る感覚のスリリングな音楽となった。
この日、1階を見渡す限りかなりの入りである。開演前、ホール入り口に向かう通路に驚くほど長い行列が出来ていたがあれはなぜなんだろう?開場時間が遅れたのだろうか?
結構長い演奏会で、終演時間は21時半近かった。
総合評価:★★★★☆