東京交響楽団東京オペラシティシリーズ 第130回を、東京オペラシティコンサートホールにて。

 

指揮:ユベール・スダーン

ヴァイオリン:郷古廉

チェロ:岡本侑也

 

メンデルスゾーン:静かな海と楽しい航海 op.27

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 op.102

(アンコール)マルティヌー:二重奏曲第2番〜第2楽章

 

シューマン:交響曲 第3番 変ホ長調op.97「ライン」

 

東響前音楽監督・桂冠指揮者であるユベール・スダーンによる年1回の客演。スダーンの音楽監督任期10年の間に、東響のアンサンブル精度が飛躍的に向上したのは多くのファンが認めるところであろう。

指揮台なしでステージに立ったスダーン氏、もう76歳なのだが、相変わらずお元気そうである。

 

1曲目はメンデルスゾーンの佳作。しっとりとした東響に弦セクションが美しく、心地よすぎて眠気が…

 

2曲目は今やN響ゲスト・アシスタント・コンサートマスターとなった郷古廉氏、エリーザベト2位という経歴を持つ岡本侑也氏によるブラームス。この二人、当たり前だが非常に上手い…郷古氏のヴァイオリンは美音。岡本氏のチェロ、深いがみずみずしく、とてもいい音色である。そういえば彼は2019年にはツィメルマンとブラームスのピアノ四重奏曲で共演したのであった。

ただ、スダーンのアプローチもそうなのだが、自分がこの曲に持っているゴツゴツした重厚なイメージからするとややすっきりしすぎていたかもしれない。

 

後半はシューマンのライン。音が鳴り始めてあれっ??と思った。聞こえてくる音が普通と違う。事前の確認不足だったのだが、今回のラインはマーラー版であった。そう、スダーンのシューマンはマーラー版なのである。東京交響楽団とはマーラー版で全集を録音していて、私は以前そのうちの2番を実演で聴いたことがある。

https://tokyosymphony.jp/pc/store/cd2.html

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-10383785792.html

大作曲家であり、存命中は大指揮者でもあったグスタフ・マーラー、シューマンの地味で素朴なオーケストレーションを見て手を入れたくなってしまったのだろう。今回のスダーンの演奏を聴く限り、金管セクションの音を分厚くしていることがよくわかる。誰が聴いても明らかに違うのは、例えば第1楽章でホルンが壮麗なファンファーレを吹き鳴らすところの最初がゲシュトップフト(手をベルの奥に突っ込んで、鋭い金属的な響きを出す奏法)であることなどか。同じマーラー版を使用したシャイー指揮ゲヴァントハウス管の録音を聴くと、マーラー版がオリジナル版と違うところを(弦のフレーズなども含めて)作為的なくらいに強調しているからとてもわかりやすい。

そうした版の違いはあるにせよ、今回の演奏、スダーンらしく非常にバランスがよく、自然な響きのいい演奏であった。マーラー版でこれだけ自然に音楽が流れるとは。

 

弦は14型(コントラバスは7)。

 

総合評価:★★★☆☆