読売日本交響楽団第622回定期演奏会をサントリーホールにて。

 

指揮:シルヴァン・カンブルラン

ヴァイオリン:成田達輝

三味線:本條秀慈郎

読売日本交響楽団

 

ドビュッシー:遊戯

一柳慧:ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲[世界初演]

一柳慧:Farewell to the Summer Light(ヴァイオリン・三味線・アンコール)

 

ドビュッシー:『管弦楽のための映像』より「イベリア」

ヴァレーズ:アルカナ

 

読響前常任指揮者シルヴァン・カンブルランが来日。全3公演を指揮するが、今回はそのなかで最も尖っているプログラムだと思う。前半、後半ともドビュッシー+現代音楽という選曲で、前半の現代音楽は日本の作曲家、後半は現代音楽と言っても既に古典と言ってよいヴァレーズ作品が並んでいる。

 

前半、後半に演奏されたドビュッシー。カンブルランはフランス人であるが、ドビュッシー演奏はフランス音楽のエスプリよりも、現代音楽への橋渡しとしての位置付けで、感情表現を排して精妙な表現を優先しているように感じられた。後半のイベリア、最近ではデュトワ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ、ショハキモフ指揮東響でも聴いたばかりだが、アプローチはだいぶ異なる。トランペットのファンファーレなど、あえて強調していなかったように思われたのだが、個人的にはあの部分、もっと朗々と鳴らして欲しかった。

 

前半の2曲目は、この演奏会のわずか18日前である10月7日に亡くなられた一柳慧氏(1933〜2022)の新作。まさにこれが氏の遺作となってしまった。ヴァイオリンと三味線という斬新な組み合わせの曲である。

亡くなられたばかりの高名な作曲家の遺作に対してケチを付けるのもどうかとは思うが…この作品は全くいいと思わなかった。正直、枯渇しているのではないかと思ってしまう…メリハリに欠け、盛り上がる部分もないし、冗長だ。そして、正直、三味線の音はオーケストラには合わないということを痛感させられてしまう…三味線は三味線だけで聴いた方がいい。

 

最後に演奏されたヴァレーズのアルカナ、これが今回の演奏会の白眉であった。とてもこの曲が1927年に書かれたとは思えぬくらい、今日聴いても斬新かつ新鮮な音楽である。カンブルランの演奏はまさに鮮烈!鮮やか極まりない。11名の打楽器奏者たちの大活躍もすごいし、20名のブラス・セクションの重量感もこの曲にぴったり。こういう演奏を聴くと本当に嬉しくなってしまう。

 

弦は一柳作品が12型、それ以外が16型通常配置。

カンブルランも若いと思っていたらもう74歳だそうだ。まあ、そうは見えないぐらいにとても元気。いや、今の時代、指揮者で74歳は若い方なのかもしれない。

 

総合評価:★★★☆☆