ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2021 リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を、サントリーホールにて。

 

モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K. 385「ハフナー」

シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D. 944「グレイト」

(アンコール)

J・シュトラウス:皇帝円舞曲

 

今回のウィーン・フィルハーモニーウィークインジャパン2つ目のプログラムは、安定のモーツァルトとシューベルト。指揮はウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパンとしては4度目の登場となるイタリアの巨匠、リッカルド・ムーティである。

 

かつてミラノ・スカラ座の音楽監督を務めていたころ「皇帝」と言われるほどの強権を発揮しその後いざこざで辞任するなど、かつて各方面でいろいろと軋轢があったムーティであるが、ウィーン・フィルからは絶大な信頼をされており関係は極めて良好だ。

ムーティがウィーン・フィルを振る場合のレパートリーは独墺系が比較的多いということもあるからだろうか、ムーティはウィーン・フィルの自発性を尊重し、自らの存在感を前面に出さずオーケストラに任せる場合が多いため、良好な関係が続いているのだろうと思う。

今回のモーツァルト、シューベルトの演奏もその典型例だ。ムーティは基本的なテンポ設定などを決めた後はオーケストラに任せ、随所でえいっ!と手綱を締めて音楽を引き締めるのである。

 

前半のモーツァルト。やはり、テンポはわずかに遅めで、モーツァルトにしては重厚な表現だ。晩年のカラヤンのモーツァルトも相当重くなっていたが、それに近いような気がする。弦は12-10-8-6-5、いつも通り左から第1Vn、第2Vn、チェロ、右手前がヴィオラ、右手奥がコントラバスという配置だ。この曲では、艶やかな弦とともに、若手が多くなった木管のふっくらとした質感が実に素晴らしい。

 

後半のシューベルトもかなりもったりとした表現である。冒頭のホルンの旋律、やはりウィーン・フィルのウィンナ・ホルンで聴くのと通常のフレンチ・ホルンで聴くのでは印象がまるで違っていて、ウィンナ・ホルンの響きはかなり素朴でまったりしている。

金管群のフォルテッシモは全くうるさくならず、ティンパニの音と見事にブレンドされているのがウィーン・フィルならでは!この音はウィーン・フィル以外のオーケストラではまず聞くことができない。ティンパニが本当に素晴らしい音で(ヤギの皮だろう)、かつてウィーン・フィルに在籍していた故ローランド・アルトマンの音色を思い出した。

それなりに重いテンポではあったが、音色が素晴らしく飽きることはなかった。それにしてもこの曲は指揮者の力量がはっきりと出る曲で、退屈な演奏は本当に長くて退屈になる難しい曲である。つい先日日本のオケで聴いたときはとても退屈だった…

後半の弦は14-12-10-8-7。

余談だがこの曲、ウィーン・フィルのセッション録音は意外にも少なくて、ムーティ(1986年)のほかはショルティ(1981年)、ケルテス(1963年)ぐらいしか見当たらないのだ(ライヴ録音だとかなり多くはなる)。

 

開演前に本プログラムに登場しないハープ奏者がなぜか念入りにチューニングしていて、やはり本プログラムに登場しないはずのスネアドラムと大太鼓が…というわけで、アンコールは皇帝円舞曲。本プログラムが20時45分過ぎに終わり、アンコールが終わると21時過ぎぐらいだった。

 

会場はやはりほぼ満席。ムーティは会場でいくつか出されていた横断幕に反応、投げキスを送ったりしていた。ソロ・カーテンコールは2回。

 

総合評価:★★★★☆