フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021 東京フィルハーモニー交響楽団

 

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ(東京フィルハーモニー交響楽団 首席指揮者)

ハープ:吉野直子 *

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」 から 序曲

レスピーギ:組曲「シバの女王ベルキス」

ニーノ・ロータ:ハープ協奏曲 *

(ソリスト・アンコール)M.トゥルニエ:演奏会用練習曲「朝に」

レスピーギ:交響詩「ローマの松」

 

外国人指揮者の演奏に飢えているこの状況で、東京フィル首席指揮者のバッティストーニが来日。なんともありがたいことである。欧州ではすでに夏の音楽祭が制限を設けながらも開催されている状況であり、2週間の隔離を経ての来日はかなり効率が悪いはず。ハーディングやミンコフスキのように、効率の悪い日本への渡航をやめる指揮者が出てきているなか、フェスタサマーミューザのためにわざわざ来日してくれるとは…

 

イタリア人作曲家の音楽で固められた今回のプログラム、冒頭とメインは有名曲だが、その2曲にはさまれた間の2曲、私が知らない曲である。今回の演奏を聴いて、有名な曲にはそれなりの理由があり、有名にならない曲も、有名にならない理由があるということを実感した。

 

熱血漢バッティストーニにふさわしいヴェルディの序曲、熱く切れ味のよい音楽で心地が良いし、最後に演奏された「ローマの松」はやはり何度聴いてもテンションが上がる超名曲だ。「ジャニコロの松」における濃厚な表現はイタリア人指揮者ならではのもので、これがヨーロッパのオケであればさらにまた官能性が増したことであろう。ローマの松もバッティストーニお得意な曲であり、東京フィルの名手たちの素晴らしいソロもあいまってかなり聴き応えある音楽に仕上がっていた。「アッピア街道の松」におけるバンダはオルガンの左右に配置。

 

2曲目に演奏されたのはレスピーギの「シバの女王ベルキス」。レスピーギといえばローマ3部作、「リュートのための古風な舞曲とアリア」あたりまでが有名で、それ以外の曲はぐっと知名度が下がる。「シバの女王ベルキス」や「教会のステンドグラス」はそれでもまだ有名な方かもしれない。

バレエ音楽「シバの女王ベルキス」からの4曲を抜粋した組曲、太鼓が大活躍する「戦いの踊り」などはかなり聴き応えがあるけれど、なんというか、ちょっと外面的な効果が目立つというか…ちなみにこの曲、吹奏楽の世界では結構有名らしい。「お祭り男」系のバッティストーニに向いている作品ではなかろうか。

 

続いて演奏されたニーノ・ロータのハープ協奏曲、吉野直子はどんな曲でも見事に演奏できてしまうのがすごい。6月の東響定期でもライネッケのそれほど面白いとは言えない協奏曲を見事に弾きこなしていたが、あの曲に比べるとロータのこの作品の方がまだいいか。とはいえ、1947年にこんな古くさい作風の曲を書くとは…

プログラム・ノートによればニーノ・ロータ自身はクラシックの作曲家を自認し、映画音楽は趣味だと語っていたそうなのだが。ニーノ・ロータといえばどうしたって「ゴッドファーザー」「太陽がいっぱい」。その「ゴッドファーザー」愛のテーマといえば暴走族のクラクションにもなっているくらい有名だ。

吉野直子がアンコールで演奏したトゥルニエの曲の、あまりに優雅で聡明な表情には驚き。

 

弦セクションのサイズはヴェルディとレスピーギが14型、ロータは8-6-5-5-3。

平日夜公演ながら、割と客席は入っていたほうではなかろうか。

 

総合評価:★★★☆☆