オーケストラアンサンブル金沢 第443回定期公演マイスター・シリーズを石川県立音楽堂コンサートホールにて。

 

指揮:マルク・ミンコフスキ

 

ベートーヴェン   交響曲 第1番 ハ長調 作品21

ベートーヴェン   交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」

 

オーケストラアンサンブル金沢(OEK)と、OEK芸術監督マルク・ミンコフスキによるベートーヴェン全交響曲演奏会の1回目。ミンコフスキ、来日後3日の隔離を経て無事に演奏会開催となった。

 

マルク・ミンコフスキは古楽系の指揮者。古楽系指揮者がモダン楽器のオケを振ったベートーヴェンというと、故アーノンクール、ノリントンを思い出す。ミンコフスキ、ベートーヴェンの交響曲を演奏したという記録は私が探す限り見当たらないので、ひょっとするとこうして全曲指揮をするのは今回が初めてなのかもしれない。

そのようなわけで、古楽系指揮者に多い細部へのこだわりは(まだ?)それほどまでに多くは感じられなくて、「意外に」普通にいい演奏であった。古楽系だからテンポが速めだろうとか、ヴィブラートは控えめなのだろうとかいう先入観は覆され、いい意味で期待を裏切られた格好だ。しかし音楽の表情が実に快活で、常に前進していくようなワクワクした感じや曲全体でクレッシェンドしていくようなイメージがあるのは、ミンコフスキの演奏の素晴らしいところである。

 

弦は1番が8-6-4-4-2、3番が10-8-6-5-3。両翼配置であるが、コントラバスはステージ最後方中央に配置されていた(これはノリントンも同じだったと記憶する)。これだけの小編成でありながら弦楽器がかなりの重量感を持って聞こえたのは驚き。私の座席は3階センターだったのでステージからそれなりに遠かったのだが、音圧は十分であった。

細かい部分で言うと、3番第1楽章のホルンであるフレーズのある音にゲシュトップをかけていたのはこだわりの結果であろうか(ホルンはもちろんナチュラルホルンではなく、通常のフレンチホルンであった)。第4楽章第1変奏、最近ではフォアシュピーラー4名だけで主題を演奏することが多いが、特にそれはしていなかった。

 

この日のオーケストラ、メンバー表を見るとなんとエキストラが22名もいる(特に弦は15名もいる)。そのためか、皮肉にも弦は私が記憶するOEKの音よりもずっとよく鳴っていた…硬めの音のティンパニを見事に操っていたのは、やはり客演奏者で元読響首席ティンパニストの菅原淳氏。それにしても、英雄第3楽章トリオのホルンはちょっとやばかったのではないだろうか…

 

割と直前にチケットを購入したときにはあまりいい席がなかったのだが、実際には半分程度の入り。1階平土間など多くのエリアでは1席置きに売られていたようだ。

 

ミンコフスキとOEKによるベートーヴェン交響曲全曲演奏、今回のミンコフスキの来日ではこのあと2番&8番、6番&5番が演奏されるが、いずれも平日のため行けない。次回来日は10月で4番&7番、最後は2022年3月で9番となる。

 

総合評価:★★★☆☆