《読響アンサンブル・シリーズ 特別演奏会》 カンブルラン指揮〈果てなき音楽の旅〉を、紀尾井ホールにて。

 

指揮=シルヴァン・カンブルラン

ピアノ=ピエール=ロラン・エマール*

 

ヴァレーズ:オクタンドル

メシアン:7つの俳諧*

シェルシ:4つの小品

グリゼー:「音響空間」から“パルシエル”

 

この3月で読響常任指揮者を退任するカンブルラン、最後にしてこのやりたい放題のプログラムである。まさにカンブルランの本領発揮といったところ。

会場はものすごく盛り上がったし、カンブルランの任期中、年1回ぐらいはこうしたオール現代の、尖りに尖ったプログラムをやってもらいたかったものである。

 

前半はヴァレーズ(1883〜1965)とメシアン(1908〜1992)という、現代音楽のなかでもすでに「古典」になりつつある作曲家の作品だ。ヴァレーズの作品の中でもそれほど有名ではない「オクタンドル」も、メシアン作品の中ではまあまあ有名な「7つの俳諧」も、とても聴きやすい音楽である。「7つの俳諧」はメシアンが新婚旅行で訪れた日本の印象を音楽にしたもので、山中湖や軽井沢の鳥の声が聞こえる。メシアン作品のピアノはエマールが弾くという贅沢。

 

しかしこの日の白眉は後半の2曲だ。

 

イタリアの作曲家シェルシ(1905〜1988)は他の作曲家との共同作曲という形態を取っていたということで死後その名前がクローズアップされてきたそうだ。今回演奏された「4つの小品」は第1楽章がファ、第2楽章がシ、第3楽章がラ♭、第4楽章がラというそれぞれほぼ一つの音のみが楽章を構成するという信じられない音楽であるが、様々な楽器の音色の特性からか、なぜか飽きることなく聴くことができるという不思議な音楽である。

最後に演奏されたグリゼー(1946〜1998)はシェルシに影響され、倍音を活かした音楽を書いた人で、「スペクトル楽派」と言われる。「パルシエル」も各楽器の倍音がなぜか心地よい空気を作り出しているわかりやすい音楽で、音色が各楽器の間で次々と変化している様がとても面白い。最後は各楽器の奏者が譜面でわさわさとノイズを立て、指揮者が赤いハンカチを取り出して照明が暗くなったあと、シンバルがライトアップされるが叩くことなく終了。

このグリゼー作品は本当に素晴らしくて、この日一番の収穫である。グリゼーは残念ながら早死してしまったが、他の作品も是非聴いてみたいものだ。

 

読響の奏者たちが極めてハイレベルの演奏を展開、その音はなんともなまめかしく、紀尾井ホールの空間にきらきらと拡がっていった。

 

技術点:★★★★★

総合感銘度:★★★★☆