札幌交響楽団第617回定期演奏会(2日目)を、札幌コンサートホールKitaraにて。
指揮 / クシシュトフ・ウルバンスキ
ヴァイオリン / アレクサンドラ・スム
ペンデレツキ:広島の犠牲によせる哀歌
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調
(アンコール)バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番〜アンダンテ
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
雪が降る札幌。
米国のインディアナポリス響音楽監督、NDRエルプフィル首席客演指揮者を務めるポーランドの俊英、クシシュトフ・ウルバンスキは現在36歳。2012年から3年間、東京交響楽団の首席客演指揮者を務めたことからわが国にもファンが多い。
そのウルバンスキの札響初登場のプログラムは、全て20世紀作品だ。
1曲目に演奏されたのは、52名の弦楽器奏者(ヴァイオリン24、ヴィオラ10、チェロ10、コントラバス8)のために書かれた「広島の犠牲によせる哀歌」。作曲は1960年。参考までに、この曲のタイトルは後から付けられたものであり、広島をイメージして作曲された音楽ではない(当初のタイトルは「8分37秒」)。
この曲、静寂の美しさが際立つ精妙な演奏だった。驚いたことにウルバンスキは暗譜で指揮!こんな現代曲、普通暗譜で振るかね…私の席からは奏者の譜面が見えたのだが、多くの部分がトーン・クラスターのために真っ黒に塗りつぶされていて、あれをどうやって覚えるのか…ウルバンスキは指揮棒を使わずに振っていたのだが、掌のやわらかな動きや身体の流れるような動きで、曲のイメージをオーケストラにしっかりと伝えていたのはさすがである。
ちなみにウルバンスキ、2013年に東響でもこの曲を取り上げているが、そのときのイメージは今回の演奏とほぼ同じであった。https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11715611715.html
それにしても、ペンデレツキもこの頃の作品はよかった…1980年代に後期ロマンに回帰した後の彼の作品は、あまり面白くない。
2曲目はアレクサンドラ・スムがソリストを務めるショスタコーヴィチ1番。日本にも何度か来日しているスムであるが、私は今回が初めてである。スムはフランスのヴァイオリニストと記載されているが、生まれはモスクワ。
音はやや線が細めでエレガント、ショスタコーヴィチとしてはかなり優雅なアプローチであるが、第3楽章最後のカデンツァから激しさを増して雄弁になる。楽器は1700年頃製のジオフレッド・カッパというものだそうだ。
ウルバンスキのアプローチ、ショスタコーヴィチの音楽を純音楽として扱い、ソ連時代の重苦しいイメージはない(少なくとも私には感じられない)。第2楽章、第4楽章のリズムはもう少し切れ味と、前に進んでいく推進力が欲しかったが、ウルバンスキの角の取れた表現だとどうしてもそのあたりの表現は後退してしまうのかもしれない。
スムはアンコールの前に日本語で「ショスタコーヴィチの1番はとても暗いが、今の私たちには光が必要です」みたいなことを言って、バッハのアンダンテを演奏した。彼女の演奏でバッハをぜひ聴いてみたいものだ。
後半は春の祭典。これはなかなか素晴らしい演奏であった。ウルバンスキの春の祭典といえば、2013年に東響定期でも演奏している。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11729625244.html
実は東響との演奏、あまりにウルバンスキのアプローチがしなやかで角が取れすぎていて、自分の好みには合わなかった。しかし今回は、ウルバンスキのしなやかなアプローチは基本的に変わらないものの、東響のときほど彼の意図が徹底していないのがかえってよかったのか、粗野な側面とエレガントな側面が共存するタイプの演奏に仕上がっていた。
ウルバンスキは当然この曲暗譜。指揮棒を使っての指揮であったが、第2部の
「生け贄の踊り」では、まるでタコ踊りのようなジェスチャーだった。
全ての曲が16型通常配置。
会場は8割程度の入りだろうか。東京に比べると、ウルバンスキに対する熱狂はそれほどではない。
技術点:★★★☆☆
総合感銘度:★★★☆☆