黛敏郎作曲オペラ「金閣寺」を東京文化会館にて(24日)。
指揮: マキシム・パスカル
演出: 宮本亜門
装置: ボリス・クドルチカ
衣裳: カスパー・グラーナー
照明: フェリーチェ・ロス
映像: バルテック・マシス
合唱指揮:大島義彰
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄
溝口:宮本益光
鶴川:加耒 徹
柏木:樋口達哉
父:星野 淳
母:腰越満美
道詮和尚:志村文彦
有為子:冨平安希子
若い男:高田正人
女:嘉目真木子
娼婦:郷家暁子
ヤング溝口(ダンサー):前田晴翔
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京交響楽団
今週は新国立劇場「紫苑物語」に続いて「金閣寺」と、邦人作品オペラウィーク。もちろん、紫苑物語は日本発の日本語によるオペラで、金閣寺はドイツ発のドイツ語歌唱という大きな違いがあるのだが。
三島由紀夫の傑作「金閣寺」を題材に、音楽評論家吉田秀和を通じて、ベルリン・ドイツ・オペラの総監督であったグスタフ・ルドルフ・ゼルナーから黛敏郎に依頼があったのが1968年。1970年にゼルナー自身が演出を担当することで決まり、黛は原作者三島に台本作成を依頼するが、三島はゼルナーの表現主義が好きではないと言って断った。その年の11月、三島が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自裁したのは周知の通りである。初演は1976年ベルリン・ドイツ・オペラ、全幕日本初演は1991年、岩城宏之指揮東京フィル(オーチャードホール)。2015年には神奈川県民ホールにて、下野竜也指揮神奈川フィルによって再演されている。
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今回は原作を読み直すことができず、全編の台本のみを予習して臨んだのだが、一人称小説であり、主人公溝口の心理的葛藤を描いた「金閣寺」をオペラにするというのは本当に大変なことだっただろうとつくづく思った。
その心理的葛藤を、宮本亜門演出では歌手と若き日の溝口(ダンサー)の二人を常に舞台上に登場させることによって表現していた。非常にシンプルでわかりやすく美しい演出である。それにしても最後に登場人物が横一線に並んで立つというのは定番で、紫苑物語も全く同じであった。
金閣寺が戦争で焼けなかったというところで、宮本演出は原爆投下のキノコ雲を背景に映像で映し出し、昭和天皇とマッカーサーを登場させるが、このあたりは音楽が見事に演出とマッチしていた。
柏木が溝口に尺八を教えるシーン、前回神奈川公演ではカットされ今回はカットされていなかった(アルト・フルートによる演奏)。柏木との間の「南泉斬猫」の禅問答のくだりは全てカットされていた。それ以外もかなりのカットがあった模様。
主役溝口を歌ったのは宮本益光。やや細かったがでずっぱりのこの役を見事にこなしていた。2015年の神奈川県民ホールにおける上演のときもダブルキャストの片方を務めていた。他の歌手で出色は柏木。シニカルなこの役を実にそれらしく演じていた。南禅寺で出征する兵士に乳を搾る女、華道の先生役を演じた嘉目真木子、高尚な見た目と溝口を蔑む高飛車な態度との落差がとてもよい。
オーケストラは東京交響楽団。1階平土間の私の席だと音圧はそれほど高くなかったが、ネスレ&ザルツブルク音楽祭のヤング・コンダクターズ・アワードを受賞した若きマキシム・パスカルが指揮するオーケストラの音楽は精緻でいきいきとしており、録音で聴く1991年の日本初演や2015年神奈川フィル上演を上回る出来である。
それにしても、やはり三島の「金閣寺」はオペラに向いているとは言えないだろう。ストーリーの大半を溝口の回想としたのはいいとしても、多くのいきさつを合唱に語らせなければならなかったし、展開がかなり速く、細かい部分は原作を読んでいないと理解できないと思われる(有為子の自転車のシーンなど)。ドイツ語オペラゆえ、日本語オペラよりも時間あたりの情報量は多いとは思うのだが。
技術点:★★★★☆
総合感銘度:★★★☆☆
