パトリツィア・コパチンスカヤ(Vn)、ポリーナ・レシェンコ(Pf)のリサイタルをトッパンホールにて。

 

プーランク:ヴァイオリン・ソナタ

クララ・シューマン:ピアノとヴァイオリンのための3つのロマンス Op.22より 第1曲 Andante Molto

バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76

エネスク:ヴァイオリン・ソナタ第3番 イ短調 Op.25《ルーマニア民俗風》

ラヴェル:ツィガーヌ

(アンコール)

ギヤ・カンチェリ:Rag-Gidon-Time

 

モルドヴァ出身のヴァイオリニスト、コパチンスカヤ。愛くるしい顔立ちにぶっとんだパフォーマンスで、日本のオジサンに大変な人気である。先日、都響でシェーンベルクを弾いたときも完売だったが、この日のリサイタルも当然ながら完売である。

私が彼女の演奏を初めて聴いたのは、2004年N響B定期(スクロヴァチェフスキ指揮)で、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾いたのだが、このときは左右の靴が赤と白と別々でびっくり!そして、記憶が確かならば、鼻ピアスをしていたような…

女性の年齢を言うのもなんだが、その彼女もなんと42歳(全く見えないのだが)。今は、演奏会ではアリス紗良オットと同様に裸足である。

コパチンスカヤはモルドヴァ出身。プログラムノートを書いている片山杜秀先生の解説にある通り、モルドヴァ、ウクライナ近辺からは世紀のヴァイオリニストが量産されていて、コパチンスカヤもその系譜のヴァイオリニストなのである。

 

この日の演奏会、実に凝ったプログラムで、フランスと東欧系のプログラムながら、直前にクララ・シューマンのロマンスが間奏曲のように加わった。

洒脱なプーランクや、ラヴェルのような曲でも、バルトークのような驚くほどの前衛と民族性を兼ね備えた曲でも、エネスクのような民族性とまるでフランス近代のエスプリまで兼ね備えたような曲でも、コパチンスカヤは圧倒的な説得力を持って聴き手の心にぐっと迫ってくる。これは練習の成果であるというのはもちろんであるが、持って生まれた天性の才能が大きいのだろうとつくづく思う。表現力が卓越しているのは言うまでもないが、この日の曲目は全て技術的にも極めて難易度が高いはずなのに、全くそれを感じさせない余裕があるのはさすがだ。

コパチンスカヤは全ての曲で譜面を見ていたが、前半は椅子に座って演奏し、後半は立って演奏した。

ピアノを担当したのはロシアのポリーナ・レシェンコ。この人も負けず劣らず音楽の表情が豊かでとても味わいある素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

 

アンコールはジョージアのギヤ・カンチェリ(1935〜)がヴァイオリニストであるギドン・クレーメルに献呈したラグ・ギドン・タイム。おどけた表情の短い作品で、最後コパチンスカヤは弾きながら舞台から去って行った。