東京都交響楽団第871回定期演奏会Bシリーズを、サントリーホールにて。

 

指揮/大野和士

ヴァイオリン/パトリツィア・コパチンスカヤ

 

シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲 op.36

ブルックナー:交響曲第6番 イ長調 WAB106(ノヴァーク版)

 

2019年自分にとっての最初のコンサートはこの演奏会となった。人気女流ヴァイオリニスト、パトリツィア・コパチンスカヤが出演するからだろうか、シェーンベルクとブルックナー6番という通好みのプログラムにもかかわらず、チケットはなんと完売である。

 

シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲、実演で聴くのは初めてだ。録音でも、ヒラリー・ハーンとエサ・ペッカ・サロネンの共演盤ぐらいしか聴いたことがない。そんなわけで、とても曲に親しんでいるとはいえないのであるが、実際この曲を聴いてみると、シェーンベルクにしては比較的耳当たりがいい音楽なのである。

書かれたのは1934年。シェーンベルクがナチスを逃れて米国に渡ってから書かれた曲ゆえか、多少は大衆に迎合したようなところも全くなくはない。12音技法を用いつつも様式は意外にも古典的であり、この曲に調性があったとしたらとても保守的な作風の音楽に聞こえるはずだ。まあ、とはいえほぼ同時期である1935年に作曲されたベルクの協奏曲に比べると、やはり「名曲度」は低いであろう…

曲に慣れ親しんでいるわけではないとはいえ、コパチンスカヤの演奏が素晴らしいことはもちろんわかる。こうした調性がない音楽でも、全く無機的に聞こえることなく、いきいきとした温かみをもって聴かせることができるのが彼女の演奏の素晴らしいところだ。そして、大野和士指揮都響の演奏も極めて鮮やかかつ精緻であった。日本のトップオーケストラ、こうした難曲を演奏するとそつなくこなすのがすごいところである。弦は12型。

 

休憩中、友人同士で、前半が難曲でとても大変だっただろうから後半は緩くなるのでは?という話をしていたのであるが…

果たして、後半は正直私には全然ダメであった。

冒頭の音を聴いて、あ、これはダメだとすぐに思ってしまった。今ひとつ緊張感に欠け、特にホルンパートが最初のうちどうもしっくりこなかったのだ。ただ、オーケストラが緩いという以前に、まず大野和士のブルックナーへのアプローチに共感できなかったのである。

ブルックナーの6番、個人的にはブルックナーの交響曲のなかでも比較的後になってその魅力がわかってきた音楽である。7番以降の崇高な作品群ともちょっと趣を異にしていて、推進力を持って前に前に進んで行くような演奏でないと曲の良さがわからないような気がするのだ。

その点、今日の大野の解釈は必要以上に大上段から構えてしまっていて、空回りしていたという印象が強い。テンポも少々遅すぎる。素晴らしい第2楽章も、崇高さを強調するあまりそれが完全に裏目に出てしまっている。その他の楽章でも、トゥッティの金管がうるさすぎ。

途中から退屈してしまい、早く終わらないかと思っていた。新春早々で、オーケストラも本調子ではなかったのかもしれないが。終演後、拍手もそこそこに会場を後にした。