内田光子ピアノ・リサイタル シューベルト・ソナタ プログラム (第2夜)をサントリーホールにて。
シューベルト:
ピアノ・ソナタ第4番 イ短調 D. 537
ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 D. 840
ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D. 960
(アンコール)バッハ:『フランス組曲』第5番 ト長調 BWV816よりサラバンド
素晴らしい…驚異的な完成度である。ここ14年ほど、内田光子の演奏を来日のたびに聴いてきたが、完成度の点でも円熟度の点でも、今回が最高だろう。第1夜を聴けなかったことが悔やまれてならない。
この日演奏されたシューベルトの3つのソナタ、なんという寂しい音楽なのだろうか。美しい旋律の向こうに、垣間見える、暗く深い淵。
4番が書かれたのが20歳、15番「レリーク」が書かれたのが28歳、そして最後のソナタ21番が書かれたのが「最晩年」の31歳である。内田光子の演奏、後期の作品になるにつれて深まっていくシューベルト作品の光と翳を見事に描いていたように思う。
内田光子のシューベルト、かねてから張り詰めた緊張感を持ち、聴いているこちら側が居住まいを正さねばならない気持ちにさせられるような性質の演奏である。今回はそれに加えて、音に温かみとまろやかさが増し、さらに一つ一つの音が驚異的な水準までに統制され、磨き抜かれている。
どのソナタのどの部分も素晴らしいのであるが、特に後半に演奏されたシューベルトの最高傑作D960は、今思い出しても鳥肌が立つ超名演であった。第1楽章のそこはかとない美しさは絶品。第2楽章の静寂は、永遠にときが止まって欲しいと思うほどの美しさである。第3楽章、第4楽章の絶妙な加減のはつらつさがまたいいのである。
チケット完売のこの公演、後半は皇后陛下がいつものRBブロック1列目にてご鑑賞された。肝心なところで結構咳が多かったのは残念。
アンコールで演奏されたバッハがまた、聴いたこともないような音色だったので驚いた。実にまろやかで温かい。今度は彼女のバッハを聴いてみたいものだ。
総合評価:★★★★★
