第20回記念別府アルゲリッチ音楽祭 オーケストラ・コンサート〜アルゲリッチMeetsプロコフィエフ を、東京オペラシティコンサートホールにて。

 

マルタ・アルゲリッチ(Pf)

チョン・ミョンフン(Cond)

桐朋学園オーケストラ

 

・ブラームス:交響曲第1番ハ短調 op.68

・  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調 op.26

(アンコール)

シューマン(リスト編曲):献呈

山本正美(三浦一馬 編曲):ねむの木の子もり歌

 

 

 

温泉で有名な別府の地でアルゲリッチ音楽祭が開催されて、なんともう20年だそうだ。私は存在を知りつつも、5月はなかなか行けないなあと思いながら20年経ってしまった。温泉も音楽も大好きなのに極めて残念なことだ。来年はなんとか都合つけて行きたいものである。

 

この日、会場がやけにものものしく、聞けば後半から皇后美智子様がご臨席とのこと。今日の自分の座席は2階の正面1列目だとてっきり思い込み、2階正面に行ってみるとやっぱりおかしい。私が座るような雰囲気ではない。それで、よくよくチケットを見たら、2階でもサイドのバルコニーの1列目だった…

そう、座席を選ぶとき、アルゲリッチのピアノの直接音を聴きたくて、舞台真横のバルコニーにしたんだった。

 

前半は学生オケによるブラームス1番。

あまりに直接音がガンガン来たのと、舞台真横ゆえのバランスの悪さはあったのだが、思ったよりもオケがきちんとしているなと思った。管楽器セクション全体の音程が最初いまひとつであったが、始まってみるとオーボエやコンマスのソロなどなかなかのものである。さすが日本の木管は特にいい。

もちろん、正面の位置で聴いたらまた別の感想を持ったかもしれないのだが。

それにしても、間近で見る桐朋学園のオケ、やたらに若い…そして、女性ばかりなのに更に驚く。弦はもちろんだが、金管も打楽器も女性だらけである。

ブラームス1番、やはり暗譜のマエストロ・チョンの俊敏な指揮によって、若い学生音楽家たちが最大限の実力を発揮していたのだろうか。特に第4楽章のコーダの迫力はなかなかのものであった。弦は16型。

 

後半、いよいよ大御所アルゲリッチの登場である。

私が彼女の実演を聴くのは、2014年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭以来。もう20年来(もっとだろうか)、黒のセーターにカラフルな柄のゆったりしたスカート、ぺったんこの靴というおなじみのスタイル。若い頃、情熱的な演奏スタイルで、その上驚くほどの美人だったアルゲリッチ。その彼女を「老けたな」と思うようになってからだいぶ経つが、その後この人はなぜか全く老けないのだ。すごい。もう20年は変わっていないような…

病気もしてキャンセルも何度もあったので、2018年の現在どういう演奏なのか心配していたのだが…全くの杞憂であった!そばで聴くアルゲリッチのプロコフィエフ、強靱かつクリアな打鍵は全く変わらない!スピードがかつてに比べるとわずかに遅くはなっているけれど。いや、ほとんど変わらないと言っていいのではないだろうか。低音がガンガンと鳴って、キレッキレで、76歳とは思えないほどクールで素敵な演奏なのである。

第1楽章の最後のほうで、コトンという音がして何かがピアノの中に落ちたようで、第1楽章が終わったあと指揮者とともにピアノの中を確認していたが、演奏には影響なさそうでそのまま続けられた。

チョンは後半、珍しく譜面を見ての指揮だった。まあ協奏曲だから当たり前ではあるが。

アルゲリッチという人、本当にカリスマ性がすごい。故中村紘子さんが、アルゲリッチよりも指が回るピアニストは山ほどいるが、彼女は大スターなのだ、みたいなことをおっしゃっていたのを聞いたことがある。そう、彼女が稀代のスターであることは間違いない。

 

ちなみに、アルゲリッチのプロコフィエフ3番の正規盤はアバド指揮ベルリン・フィル(1967年録音)と、かつての夫であるデュトワ指揮モントリオール響(1997年録音)の二種類のみ。どちらも完成度は高いが、セッション録音ゆえかアルゲリッチ本来のテンションが感じられない。私の耳に残っている彼女のピアノの音はほとんどがライヴ録音だ。プロコフィエフ3番に関しては、学生のころNHKFMで放送されたものをカセットテープにエアチェック(死語)したシャイー指揮ベルリン・フィルとのライヴ(1983年9月ベルリン)!これは本当に強烈極まりない演奏だ。第1楽章の最後はもう悶絶しそうなくらいすごくて、あまりの壮絶さにベルリンのフィルハーモニーに思わずぱらぱらと拍手が興るのだ。ピアノだけでなくオケのキレキレ感も半端ではない。正規のCDにならないものだろうか。You Tubeで発見したので、ノイズも多いしどうかとは思うのだが一応上げておく。私のエアチェックの方が音はいい。音楽評論家船山隆氏の解説が懐かしい。当時のNHKのルールで、「アリヘリチ」と発音しているのも古い話ではある。

https://www.youtube.com/watch?v=LOCzAoUwO_c

 

アンコールはもう涙なしには聴けなかったシューマン=リストの献呈!なんと感動的な音楽なのだろうか…これはCDの録音がないはずだ。続いて演奏された「ねむの木の子もり歌」、臨席されていた皇后美智子様が聖心女子学院高等科在学中に作詞された詩に、故山本直純氏の妻、故山本正美さんが曲を付けたものだ。なんという気配りだろうか…

 

総合評価:★★★★☆