第1885回 定期公演 Aプログラム2日目を、NHKホールにて。

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ

 

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

(アンコール)バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番〜アンダンテ

シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22 ―「レンミンケイネンと乙女たち」「トゥオネラの白鳥」「トゥオネラのレンミンケイネン」「レンミンケイネンの帰郷」

 

パーヴォ・ヤルヴィがN響の首席指揮者に就任してから3年近くが経つが、その間に彼らの演奏で聴いたベートーヴェンは2015年暮れの第9のみ。

実は私、パーヴォの演奏で最も好きなのが、彼が2004年から芸術監督を務めるドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンなのである。もう、彼らのベートーヴェンを聴いたら他のベートーヴェンはみな生ぬるく感じられるくらい、彼らのベートーヴェンは鮮烈でインパクトが強烈。

そのようなわけで、パーヴォがN響とベートーヴェンを演奏したらどうなるのか期待していたのだが、前述の2015年の年末の第9は、16型倍管編成、合唱200名超えという巨大編成で、彼がドイツ・カンマーフィルと行っているベートーヴェンの、少人数で緊密なアンサンブルとは一線を画するものであった。パーヴォはオーケストラによって曲のアプローチを変えるタイプの指揮者だと痛感したのであった。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12109203182.html 

さて前置きが長くなったが、今回のヴァイオリン協奏曲、オケは12型。まさに、ドイツ・カンマーフィルの弦楽器編成と同じサイズ。そして、今回は2015年の第9と異なり、エッジが効いていて叩きつけるように重く密度が濃い音を出していたのに喝采を送りたくなった。そう、私が好きなパーヴォのベートーヴェンは、こういう音なのだ!ティンパニの音は軽めで硬め。やっとこういう演奏をするようになったのは、指揮者とオケ相互の信頼関係が構築されてきたからなのだろうか?

モダン楽器を使用しているクリスティアン・テツラフのソロ、いつもながらであるがとてもアグレッシヴでたたみかけるような前のめりのスタンスである。私は彼のこういうスタイルが大好きだ。以前に比べると細部の粗さはちょっと出てきてはいるのだが。それにしてもテツラフ、以前に比べてかえって見た目は若返っているような…髪を後ろで束ねてヒゲを生やして、なんかかっこいい。

ちなみにカデンツァはベートーヴェンが自らこの曲をピアノ協奏曲にアレンジしたときに書いたカデンツァをテツラフが編曲したもの。ちなみにベートーヴェン自作のピアノ用カデンツァを編曲するアイデアは、ギドン・クレーメル、イザベル・ファウストも採用している。

 

後半はシベリウスの「4つの伝説」。

「トゥオネラの白鳥」や「レンミンケイネンの帰郷」は比較的演奏されるが、4曲全曲演奏される機会は意外に少ない(私が実演で聴いたのは2016年、ダウスゴー指揮新日本フィルのみ)。

録音もそれほど多くなくて、あるものは大多数がフィンランド人の指揮者によるもの(ヴァンスカ、リントゥ、サラステ、カム、フランクなど)。フィンランド人以外の指揮者だと、ユージン・オーマンディ、アレクサンダー・ギブソン、エストニア人のパーヴォ・ヤルヴィ(ストックホルム・フィル)、そしてその父親のネーメ・ヤルヴィ(エーテボリ響)があるぐらいである。もっとも、エストニア人はフィンランド人と同一系の民族のようであるが。

「トゥオネラの白鳥」はカラヤンが好んでいたので耳になじんでいるが、それ以外の3曲は正直なじみが薄い。

しかしこうして4曲並べて聴くと、壮大な叙事詩ながら長大な交響曲を聴いているかのような充実感がある。和久井氏のコール・アングレの味わい深い音がとてもいい。メジャーとは言えないこういう曲をやっても、N響は当たり前に、普段演奏されている名曲と同じテンションで演奏するからすごい。実にホットであり、そして憂いも感じられる名演であった。

 

総合評価:★★★★☆