東京フィルハーモニー交響楽団第907回サントリー定期シリーズ。
ベートーヴェン/歌劇『フィデリオ』(演奏会形式)
指揮:チョン・ミョンフン
フロレスタン (テノール):ペーター・ザイフェルト
レオノーレ (ソプラノ):マヌエラ・ウール
ドン・フェルナンド(バリトン):小森輝彦
ドン・ピツァロ (バリトン):ルカ・ピサローニ
ロッコ(バス):フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ
マルツェリーネ(ソプラノ):シルヴィア・シュヴァルツ
ヤキーノ(テノール):大槻孝志
合唱:東京オペラシンガーズ(合唱指揮:田中祐子)
お話:篠井英介
新国立劇場オペラ「フィデリオ」(飯守泰次郎指揮東響)に対抗したわけではなかろうが、この5月は東フィルも豪華歌手陣を集めて「フィデリオ」を演奏会形式で3回上演。日曜日のオーチャードホールに続いて本日が2回目の公演。明後日木曜日は東京オペラシティコンサートホールでの公演となる。
今日のサントリー公演、会場が響き過ぎるという難点はあるものの、豪華歌手陣による充実した公演となった。
フロレスタンを歌ったのはペーター・ザイフェルト64歳。名歌手として名高い故ルチア・ポップ(1939〜1993)の最後の夫である。昨年のザルツブルク・イースター音楽祭「ワルキューレ」で彼の名前を見たとき、何かの間違いかと驚いてしまった。この人、まだ歌っていたのか、と。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12267078563.html
そのザイフェルトが歌うフロレスタン、粗さはあるものの声の大きさと存在感は今日の歌手陣のなかでも群を抜いている。
レオノーレ役のマヌエラ・ウール、新国立劇場出演歴もある歌手であるが、声質が美しく安定している。ドン・ピツァロ役のルカ・ピサローニ、私はザルツブルクで彼が歌う素晴らしいモーツァルトはかなり聴いてきたが、今回の悪役ドン・ピツァロに声質が向いているかは微妙。それに、今日の歌手陣の中では残念ながら声量が不足している。ロッコ役フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ、この人の歌もすでに15年以上、非常に多くの役を聴いてきたが、今回のロッコに至り非常に味のあるいいオジサンの声になってきた。マルツェリーネ役シルヴィア・シュヴァルツはリリカルな声がとても心地よい。ドン・フェルナンド役小森輝彦は声がややざらついているか。ヤキーノ役大槻孝志、歌は上手いが、日本人歌手にありがちな学芸会のような雰囲気が…
東京オペラシンガーズ、いつもながらの力強い歌唱で満足度が高い。
今回の公演、冒頭の序曲は「フィデリオ」ではなく、「レオノーレ」第3番である。ちなみに、一昨年私がベルリンで聴いたバレンボイムの演奏では、「レオノーレ」第2番が使用されていた。参考までに、今月20日から上演される新国立劇場のフィデリオでは、冒頭の序曲は「フィデリオ」で、第2幕第2場の前に「レオノーレ」第3番が挿入されるとのこと。
チョン・ミョンフンの指揮はなんと暗譜…序曲は重めの響きで遅いところは遅く、速いところは速いのだが、その後の本編は全体にかなりテンポが速め。チョンらしく、切れ味がよくすいすいと進んで行くタイプの演奏だ。プログラムには終演予定時刻21時40分とあったが、実際には21時25分ぐらいに音楽は終わっていた。
弦は12-12-10-8-6で、通常の配置である。オーケストラは予想以上に完成度が高くて、音の密度が濃く低音がどっしりと響くのはこの曲にとってはとても重要だ。
客席には英語を話す外国人がかなりたくさんいたのだが、なぜだろうか。
総合評価:★★★★☆
