いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2018 5月4日公演。

2日目は朝ちょっと雨が降ったものの、すぐに晴れ。快適な一日となった。

 

(C21)石川県立音楽堂コンサートホール

ウラディーミル・アシュケナージ(指揮)

辻井伸行(ピアノ)

オーケストラ・アンサンブル金沢

モーツァルト:

交響曲 第36番「リンツ」

ピアノ協奏曲 第26番「載冠式」

(アンコール)カプースチン:8つの演奏会用エチュード第1番

 

前半のモーツァルトの36番、アシュケナージの演奏はオーソドックスなものだろうと想定していたのであるが、意外にも金管の鋭い響きを強調して全体を縁取りする、言ってみれば今風の演奏だった。意外なところでホルンを強調していたのも驚き。リピートを全部やったからなのだろうか、演奏時間は30分を超える長さであった。

しかし今回同じホールでOEK、紀尾井ホール室内管、モーツァルテウム管を聴き比べることになって、OEKの粗さがはっきりわかってしまうのは残酷ではある…

弦は8-6-4-4-2(?)、ヴァイオリンは両翼配置でヴィオラが左手、コントラバスが右手。

 

後半の辻井伸行のモーツァルト、これはちょっと驚きであった。これほど透明感がある美しい音のモーツァルトが聴けるとは思っていなかったのだ。どうしてこんな音が出せるのか…今まで彼のショパン、ラフマニノフ、プロコフィエフなどを聴いてきていまひとつピンと来なかったのだが、モーツァルトはかなりいい。音のひとつひとつの粒立ちがしっかりとしているのが特徴的だ。

アンコールは意表を突いたカプースチン。

(総合評価)★★★☆☆

 

 

(C22)石川県立音楽堂コンサートホール

リッカルド・ミナーシ(指揮)

モナ・飛鳥(ピアノ)

ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団

モーツァルト:

ピアノ協奏曲 第20番

交響曲 第38番「プラハ」

 

モナ=飛鳥・オットは日独ハーフのピアニスト。著名な姉のアリス=紗良・オットの実演は何度か聴いているが、妹の演奏は初めてだ。

白いドレスにすらりとした長身の美人で、演奏も非常に情熱的であるが、細かいところはちょっと粗さが目立つ。そして第3楽章はかなりヒヤリとした…

 

後半のプラハ、これは非常に素晴らしい演奏であった。非常に尖った演奏で、長管の古楽器トランペットの鋭い音、ノン・ヴィブラートが特徴の、あえて言えば流行最先端のスタイルだ。かつてこのオケのシェフであったユベール・スダーンが東響を振ってモーツァルトを演奏するときも同じようなスタイルであったと記憶する。しかし何より素晴らしいのは、小編成にもかかわらずごつごつした手応えの響きもさることながら、楽員がお互いにアイコンタクトをとって、そして生き生きと楽しそうに音楽をしていることである。

弦は8-6-5-4-3(?)対向配置。

(総合評価)★★★☆☆

 

 

(H22)石川県立音楽堂邦楽ホール

広上淳一(指揮) ペーター・レーゼル(ピアノ)

坂口昌優(ヴァイオリン)

紀尾井ホール室内管弦楽団

モーツァルト:

アイネ・クライネ・ナハトムジーク

ヴァイオリンのためのアダージョ

ピアノ協奏曲 第27番

(アンコール)モーツァルト:メヌエットト長調K.1

 

前半のアイネ・クライネ・ナハトムジークは前日にモーツァルテウム管で聴いたばかりであるが、その演奏スタイルがまるで違うことに驚く。

いや、演奏スタイル以上に驚くのが、楽員の表情だ。繰り返しになるが、モーツァルテウム管の演奏は楽員が生き生きと音楽を楽しんでいるのに対して、在京オケメンバー主体の紀尾井ホール室内管は、技術的な面では全く引けをとらないものの、表情が固い。いかにも「仕事してます」という顔なのだ(仕事だから仕方ないのだが)。そのような演奏態度は音楽にも現れていて、とても上手いのだが教科書的、模範的な演奏である。

 

2曲目に演奏されたK261のアダージョは初めて聴く曲。非常に美しい曲であるが、どことなく偽作っぽいと思うのは私だけだろうか。それはともかく、ソロを弾いた坂口昌優(まゆ)さんという女性ヴァイオリニスト、一体誰だろうと思ったらどうやら地元で活動されている方らしい。かなり緊張しているのがわかった。

 

3曲目はレーゼルが弾く27番。一切の飾りも遊びもない実直そのもののモーツァルト。いや、3楽章で軽く装飾音を付ける遊びはあったか。下手な小細工を一切しないことによる迫力というものが感じられる。

作曲者の死の年に作曲された最後の協奏曲の後、作曲者が7歳の頃書いたとされるメヌエットの素朴で無邪気な音楽は心に染みる。

(総合評価)★★★☆☆

 

(A24)金沢市アートホール

ヴェンツェル・フックス(クラリネット)

ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団メンバー

モーツァルト:

ディヴェルティメントK136

クラリネット五重奏曲

(アンコール)チャイコフスキー(武満徹編曲):秋のうた

 

前半の曲目、当初は弦楽四重奏曲「狩」であったのだが、直前に変更。ハードスケジュールで準備が間に合わなかったのだろうか。

変更されたディヴェルティメントK136、4名の音量のバランスは手探り状態というところがあったが、音の性質はモーツァルテウムのオケ同様硬めの響き。といっても、ヴィブラートは普通にかけている。

 

後半のクラリネット五重奏曲、フックスのソロはまさに神!音色は濃くて深い色合いで、繊細極まりない弱音にはただただ驚く。モーツァルトはやはりこういう音で聴かないと。

アンコールで演奏された「秋のうた」、なんと武満徹が編曲している。編曲は1993年だそうだが、どういう経緯でこの編成になったのだろう。

 

(総合評価)★★★☆☆