日本フィルハーモニー交響楽団第699回東京定期演奏会(1日目)を、サントリーホールにて。
指揮:ピエタリ・インキネン
ワーグナー:歌劇《タンホイザー》序曲
ワーグナー:歌劇《ローエングリン》より第1幕、第3幕への前奏曲
ワーグナー(マゼール編):言葉のない《指環》
インキネン&日本フィルのワーグナーを聴くのはこれが4回目となる。1回目はあの素晴らしいエディト・ハラーがジークリンデを歌ったワルキューレ第1幕。2回目は歌付きでジークフリートと神々の黄昏の抜粋で、これは粗くて今一つ。3回目はラインの黄金の演奏会形式で、まあまあ。
そして4回目の今回は、歌なしの管弦楽のみによる演奏会だったのだが、後半の指環が想定以上に素晴らしいものであった。
前半のタンホイザー序曲とローエングリン第1幕・第3幕への前奏曲、予想通りインキネンの音の作り方と日本フィルの特質からであろう、重厚感はあまりなくて音の密度が薄め。特に弦には濃厚な味わいが乏しく、特にローエングリン第1幕前奏曲における弦セクションはもう少し艶やかな潤いが欲しいところ。
しかし後半の指環は一転して雄弁な演奏となった。インキネンは指環の全曲をすでにオーストラリアで2回こなしているということで、指環全体としての物語性がしっかりと伝わってきたのがよかった。もっともこれは、大指揮者ロリン・マゼール(1930〜2014)による編曲が素晴らしいことも大きな理由なのであるが。
オーケストラのみで演奏される「指環」にはいくつか編曲があって、単に名場面を抜き出して別個に演奏するものもあれば(トスカニーニ&NBC響による一連の録音や、先日のパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響B定期など)、ヘンク・デ・フリーヘルや、今回のロリン・マゼールによるほぼノン・ストップで演奏されるものもある。ちなみにフリーヘル編曲版もマゼール編曲版も、CD1枚に収まるように長さが設計されている。
フリーヘル編曲版の「指環」は個人的にはちょっと苦手なのだが、マゼール編曲版は見通しがよく、基本的に物語の展開を追って音楽が進行していくし、ワーグナーの書いた音以外を書き足すことを最小限にとどめていることもあって、原曲のあの壮大な音楽に心酔する者からしても違和感が少ないのがいい。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11384630766.html
今回改めて聴いてみると、全体のバランスとしては「神々の黄昏」が半分ぐらいを占めていたのにびっくり。音楽の流れを重視していて、ラインの黄金も、最も人気の高いワルキューレでさえも、有名な箇所をばっさり切り捨てているのが興味深い。
日本フィル、後半は意外に低音の手応えもあるが、トゥッティはやや混濁して聞こえる。とはいえ、音楽の表情はとても豊かで全く退屈することがなかった。辻本 玲氏のソロ・チェロの音が非常に繊細で美しいし、舞台上と舞台裏を行ったり来たりしたホルン首席もいい仕事をした。弦は16型対向配置。
総合評価:★★★☆☆
