ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団来日公演を、サントリーホールにて。

 

指揮:ダニエレ・ガッティ

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン

 

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61

(アンコール)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番より「アレグロ」

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68

 

昨日のミューザ公演に引き続き、オランダの超名門、王立コンセルトヘボウ管(RCO)。

 

前半は世界最高のヴァイオリニスト、フランク・ペーター・ツィンマーマンが弾くベートーヴェン!

世界に素晴らしいヴァイオリニストは数え切れないほどいるが、そのなかで

ツィンマーマンは一番好きなヴァイオリニストである。

今日の演奏を聴くと、やはりこの人がただものではないことを痛感する。なんという攻めに攻めまくった演奏なのだろうか?音楽の推進力が半端ではない。ここまで攻めまくっても、破綻することはもちろんなくて、その一歩手前のところで踏みとどまっている。リスクを恐れない演奏!

ツィンマーマンはソロがない部分も、第1ヴァイオリンのフレーズを一緒に弾いていた。こういうことをすると、オケにとってみればソリストがどのような音楽をやりたいのかがよくわかるのではなかろうか。ツィンマーマンがソロを弾くときの、オケの弦楽器奏者がとても楽しそうだったのが印象的だ。

弦は12-12-6-6-5。昨日とは弦の配置が変わっていて、左から1stVn-Vla-Vc-2ndVn、そして右手奥がCb。ハイドン&マーラーと、ベートーヴェン&ブラームスで配置を変えたのはなぜなんだろう?

ツィンマーマンのアンコールは、アンコールとしてはやや長めのアレグロ。これがまた、ぐいぐいと聴衆の心を惹きつける魅力を持った音楽なのである。本当に素晴らしい!

 

後半はブラームス1番。うーん……

ガッティのこの曲の解釈、私には違和感満載だった。

冒頭緩く始まって、展開部から音楽がとても前のめりになってくるのだが、全く自然な流れがない(これは昨日のマーラー4番もそうだった)。この曲の聴かせどころはたくさんあるけれど、例えば第4楽章のアルペンホルンの主題とか、ティンパニの連打の上にホルンがかけあう部分などの「見せ場」を、じっくり歌うこともなくほぼスルーしてしまう。その反面、通常ここまで歌うか?というくらい、第2楽章の途中はカンタービレのオンパレード。そして、第4楽章コーダは、今までの解釈からしてなんでここでこんなに遅くなるの?というぐらい失速する。トロンボーンのコラールも、もうちょっとじっくり鳴らしてくれないものだろうか?

こういう解釈は、別のオケであればそれなりに効果を発揮するのかもしれないが、RCOでやるのはどうかと思う。このオケには、手綱をうまく緩めたり引っ張ったりしながら、あくまでも自然体にオケを鳴らすタイプの指揮者が向いているだろう。そう、ハイティンクやヤンソンスのような指揮者だ。ブロムシュテットのような指揮者もこのオケに向いているかもしれない。

私はこのオケに関する限り、イタリア人の楽長はあまり好みではないかも…実はシャイーのときも私は否定的だった。念のために言っておくと、私は来世イタリア人になりたいくらいイタリアは好きなのであるが。

 

後半の弦は14-12-10-8-6。並びは前半と同じだ。

ガッティの解釈には賛同しかねるが、オーケストラの上品な味わいは素晴らしい!数年前に英グラモフォン詩の人気投票で1位になったこのオケ。そのときはヤンソンス時代だった。ヤンソンスがこのオケを指揮したときの繊細な響きは格別だった。

今日のコンサートマスターはリヴィウ・プルナール、ヴィオラ首席は波木井さん、チェロ首席はヴァシリエヴァ、フルートはエミリー・バイノン。ティンパニは先頃首席奏者となった安藤智洋さん。このオケはいつもそうだが、クラリネットとファゴットが通常のオケと真逆。

 

客席は満席に近かったが、客層はいつものクラシックのコンサートと違う。スポンサーの招待客や、大使館関係者も多かったようだ。客席に、N響定期で来日中のトゥガン・ソヒエフがいた。

 

総合評価:★★★★☆