東京交響楽団第654回 定期演奏会を、サントリーホールにて。

指揮:ジョナサン・ノット

オルガン:石丸由佳

ピアノ:児玉桃

 

リスト:バッハの名による前奏曲とフーガ S.260 (オルガン独奏)

シェーンベルク:管弦楽のための変奏曲 作品31

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

(アンコール)ラヴェル:『鏡』より「悲しい鳥たち」

ラヴェル:ボレロ

 

ノット監督による今回の定期のテーマは「ヴァリエーション」である。

冒頭置かれたオルガンソロによるリスト作品はB-A-C-H音型が随所で現れ、この音型が次のシェーンベルクの変奏曲にも現れる。後半のパガニーニ狂詩曲は「狂詩曲」というタイトルではあるが、実態は変奏曲。最後のボレロも、変奏曲というカテゴリーではないものの、ご存じの通り同一音型が様々な形を変えて現れる、広い意味でのヴァリエーションだ。

 

冒頭のリスト作品、素晴らしい曲である。リストというとピアノ曲が圧倒的に数も多いし有名だが、リストのオルガン作品は本作同様壮大でロマンティックにして演奏効果絶大なものが多い。私はオルガン演奏の善し悪しについてはあまりよくわからないのだが(というより、悪い演奏は聴けばわかるが良い演奏は比較ができない)、オーバーホールが終わったばかりのサントリーホールのオルガンの良さも相まって感動的な演奏であった。

ノット監督の意向により、オルガンソロとシェーンベルクは拍手なしで続けて演奏されたが、これは想定の範囲内だ。シェーンベルクの変奏曲は十二音技法で書かれていて、その点口ずさめるような旋律も皆無なわけであるが、解説にあるとおり、無調という点以外は極めて伝統的手法で書かれた管弦楽作品である。

ノットのシェーンベルク演奏、予想通り極めて精緻であり、オーケストラの艶やかな音色もあって非常に美しい演奏(その結果少々眠くなったのだが)。全体のバランスは、このオケらしく低音がやや弱めで音響全体のバランスは軽めに聞こえる。BACHの主題、導入部、第2変奏、フィナーレに登場するとのことだが、正直判別できなかった…

参考までに、この曲にはカラヤン指揮ベルリン・フィルによる精妙極まりない名盤がある。これはカラヤンが私財を投じて録音した新ウィーン楽派の一連の録音のなかの一つであるが、この「変奏曲」では変奏ごとにオーケストラの配置を変えて録音しているそうだ。

 

後半は一転して超名曲プロとなる。児玉桃が弾くパガニーニ狂詩曲、極めて安定的で見事ではあるが、今年に入ってイノン・バルナタン(アラン・ギルバート指揮都響)、イゴール・レヴィット(キリル・ペトレンコ指揮バイエルン国立管)による濃厚な演奏を聴いたばかりなので、ちょっと音の深みに欠ける感もある。第18変奏における弦セクションの豊麗な響きが素晴らしい。

 

最後はボレロ。ノットがボレロを振るとは予想外であったが、実に鮮やかで華麗なボレロだ。オケのソリストたちも素晴らしく、聴き応えのある演奏だった。そして、予想通りだがノットの指揮姿はなんともかっこよすぎる!

ノットのラヴェルのこの音色を聴いて、彼が最初にこのオケを振ったときのあの感動を思い出した…あれも、ラヴェルだったのだ。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11041489196.html 

 

弦はパガニーニ狂詩曲を除いて16型対向配置、パガニーニのみ14型。

前半の渋いプログラムにもかかわらず客席は結構埋まっていた。

 

総合評価:★★★★☆