東京交響楽団川崎定期演奏会第61回を、ミューザ川崎シンフォニーホールにて。

 

指揮:ジョナサン・ノット

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

ソプラノ:天羽明惠

合唱:東響コーラス(合唱指揮:冨平恭平)

 

細川俊夫:「嘆き」~メゾ・ソプラノとオーケストラのための

マーラー:交響曲 第2番 ハ短調 「復活」

 

 

昨日に続いて同一プログラムの2日目。驚くべき完成度である!

今回の公演、マーラー2番という大曲と、細川俊夫の現代作品という重いものにもかかわらずリハーサルが2回しかなかったようで、昨日の公演はオケが手探り状態だった。しかし今日のこの完成度の高い演奏を聴くと、昨日の本番、実は公開総練習だったのか…

 

もちろん昨日第1日目の演奏だって、あれだけ聴衆が熱狂して大喝采を送っているのだ。私が聴いた席は、昨日は2CA、今日が2CB。そういう違いがあるにしても、やっぱり今日の演奏の方が総合評価では圧倒的に高いだろう。

何より、1日目にたくさんあったオケのキズが2日目はほぼ解消されている。ノット監督自身のやりたいことも、放射している熱量も実はそれほど変わっていないのかもしれないが、受け入れるオケが格段によくなっている気がする。

 

ノットのテンポ設定はどちらかと言えば遅めの部類だろうか。録音で聴く限り、この曲で速めなのはショルティ(80分程度)、ノリントン(78分)、遅めなのはテンシュテット95分、バーンスタイン93分あたりだが、ノットは85分程度。全体のバランスがとてもよく、曲の細部まで知り尽くした感がある。それにしてもノットの指揮のかっこいいこと!崇高な芸術を体現する役割を担っているとはいえ指揮者もショウマンであるから、流麗であざやかな指揮、見た目にすごい指揮というのはやはり聴衆や奏者の心をつかむのは間違いない。カラヤンもマゼールも、指揮振りのすばらしさで人心を掌握していたのだろうと思う。

独唱も合唱は昨日同様素晴らしいし、荒さんのオーボエは涙が出そうなくらい上手い。1日目も2日目も、ノットが終演後にそばまで歩み寄って真っ先に立たせたソリストは彼女だった。そして今日はトランペットの大隅氏と、今日素晴らしいソロを吹いたトロンボーンの荻野氏の引退公演。オケメンバーたちに対してもノット監督同様の大喝采が浴びせられた。ノットは引退する二人のところまで歩み寄って握手。

バンダ、今日は私の席からドアの外のトランペットと打楽器のバンダが見えたのだが、ちゃんと副指揮者が振っていた。

 

聴衆、1日目よりもずっと静かだったのではなかろうか。やはり2日目もノット監督のソロ・カーテンコールが当然のようにあった。

 

前半の細川作品は1日目と同水準の名演。よくよく考えてみると、「復活」の前にこの東日本大震災の哀悼歌を配置したというのは素晴らしい選曲である。

 

さて来週はフェスタサマーミューザのオープニングで、浄夜とハルサイというこれまたノット好みのプログラムだ。こちらも聞き逃せない。

 

総合評価:★★★★★