音楽ファンの皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

新年の聴き初めは、吉野直子のハープ・リサイタル(サントリーホールブルーローズ)。

 

ブリテン: ハープのための組曲 op. 83

クシェネク: ハープのためのソナタ

ヒンデミット: ハープのためのソナタ

サルツェード: 古代様式の主題による変奏曲

        シンティレーション「煌めき」

                  バラード

(アンコール)サルツェード:つむじ風

 

ハープを伴う室内楽の演奏会に行ったことは結構あるが、ハープのリサイタルというのは意外なことに一度も行ったことがなかったような気がする。

今回、前半ではブリテン、クシェネク、ヒンデミットという20世紀の著名作曲家(クシェネクは著名とは言えないかもしれないが)が書いたハープのためのオリジナル作品、後半はハーピストであったサルツェードの作品が演奏された。

正直、前半の著名作曲家の作品の方を期待していたのであるが、実際には後半のサルツェード作品の方が、ハープという楽器の特性が最大限に発揮されていてずっと聴き応えがあった。

 

カルロス・サルツェード(1885〜1961)はバスク系フランス人のハーピストで、トスカニーニの招きで渡米しメトロポリタン歌劇場の首席ハーピストとなった人物だそうだ。

私はハープという楽器のことをよく知らないのであるが、これほどまで多彩な音色が出せるとは!全く違う音色の音が、同時に別々の旋律を奏でるのには驚き。演奏された曲はどれも大変な技巧を要求される曲に違いないが、吉野さんの演奏を聴いていてもそれほど大変さを感じない。しかも(前半の曲も含めて)全て暗譜なのだ。まあ、ピアニストも普通完全暗譜ではあるが。残念ながら私の席からはペダリングが全く見えなかったのだが、ペダルの操作も相当なテクニックであったことだろう。

 

後半のサルツェードに比べると、前半に演奏された著名作曲家のオリジナル作品は聴感上地味なところがあり、正月ボケもあってちょっと眠くなってしまった…せっかくなのできちんと予習していくべきだった。著名な作曲家によるハープ・ソロのオリジナル作品は少ないのでこういう機会は貴重なはず。

その中では、ヒンデミットの作品が非常に開放的な明るさに満ちた音楽で、あまりドイツ人の作品という感じがしないのが不思議。クシェネク作品は12音技法も登場するが、ハープという楽器で演奏されると尖ったところがなくなるから面白い。

 

総合評価:★★★☆☆