10周年記念 東京特別公演 ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路2016 をサントリーホールにて。
ヴァイオリン:樫本大進、ナタリア・ロメイコ
ヴィオラ:アントワン・タメスティ
チェロ:堤剛、クラウディオ・ボルケス
コントラバス:ナビル・シェハタ
フルート:エマニュエル・パユ
オーボエ:古部賢一
クラリネット:ポール・メイエ、アンドレアス・オッテンザマー
バスーン:ジルベール・オダン
ホルン:ラデク・バボラーク
ピアノ:エリック・ル・サージュ
モーツァルト: オーボエ、クラリネット、バスーンのためのディヴェルティメント第5番 K439b (古部、オッテンザマー、オダン)
ドヴォルザーク: ノクターン ロ長調 Op.40, B47 (樫本、ロメイコ、タメスティ、ボルケス、シェハタ)
シェーンベルク: 室内交響曲第1番 op. 9(ウェーベルン編)(樫本、パユ、メイエ、ボルケス、ル・サージュ)
マルティヌー: マドリガル・ソナタ H291 (ル・サージュ、パユ、ロメイコ)
ブラームス: セレナーデ第1番 op. 11 (パユ、オッテンザマー、メイエ、バボラーク、オダン、樫本、タメスティ、堤、シェハタ)
なんという豪華な顔ぶれなのだろうか。ベルリン・フィルのコンサートマスター、樫本大進が赤穂・姫路で開催している音楽祭が10年目を迎えたということで、初めて東京公演が行われた。この東京公演、後半から皇后陛下がご臨席。私がこの音楽祭を聴くのはこれが初めてである。
この日の演奏のなかで一番驚愕したのは、なんと言ってもヴェーベルンが編曲したシェーンベルクの室内交響曲第1番である。あの鮮烈極まりないシェーンベルクの音楽を、あいてサロン用に5人の奏者のために編曲したとんでもない作品。シェーンベルクは、15人の室内オーケストラのために書いたこの作品を、後に人数を増やして通常のオーケストラ用に編曲しているのだから、この作品をたった5人で演奏しようなどというのは正気の沙汰ではない…
この日の演奏、キレキレで驚異的である!凄すぎる!夥しい数の音符たちを、ここまで精確に克明に描き切ることができるとは…特にエンディングは壮絶としか言いようがない迫力だった。
最後に演奏されたブラームスのセレナード1番、作品11という初期の作品。ブラームスが後に編曲した管弦楽版で演奏されることが多いが、オリジナルはこの九重奏版である。田園風景を思わせるような明るく伸びやかな音楽だが、名手たちの音が本当に素晴らしく、特にバボラークのホルンは最高にまろやかで輝いている。
他に演奏された曲も、彼らほどの名手が演奏するのだから悪かろうはずもないのだが、ドヴォルザークの夜想曲やマルティヌーのマドリガル・ソナタなどは隠れた名曲であることを痛感した。
パユの音は相変わらず非常に華やかで力強い。オダンが使用している楽器はファゴットではなくバソン。彼らもル・サージュ、メイエもレ・ヴァン・フランセのメンバーで、私は行けないのだがこの後各地を回るようだ。