東京交響楽団東京オペラシティシリーズ 第94回。

指揮:ジョナサン・ノット

 

武満徹:弦楽のためのレクイエム

ドビュッシー:海 ~管弦楽のための3つの交響的素描

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 

前日にミューザ川崎シンフォニーホールで聴いたプログラムと同一で、70周年記念ヨーロッパツアーの曲目である。

昨日に比べると、今日の演奏の方が圧倒的に音楽的な意味での完成度は高い!ノット&東響、今まさに、非常にいい状態にあると言っていいだろう。

 

昨日のミューザにおける演奏後、ノット監督はさらに研究を重ねた模様で、今日の演奏、昨日のものとかなり異なっていたのは非常に興味深い!日によってこれだけスタイルが変わるとは…

その昔、指揮者の神様と言われたヴィルヘルム・フルトヴェングラーは、同一演目でも日によって全く違う演奏をしたと言われるが、ノットは現代においてそれを体現する数少ない指揮者なのか…?

 

2曲目の「海」、昨日もかなりキレキレで前のめりの、ぐいぐいと進んで行くタイプの演奏だったのだが、今日の演奏はさらに激しくてびっくり!今日の演奏を聴くと、ノット監督が就任時に述べていたあの言葉を思い出す−−−「リスクを取る」というあの言葉を。

そう、今日の「海」はリスクを取って限界に挑んだと言ってもいいくらい、オーケストラを極限まで引っ張り、オーケストラの性能の限界に挑戦した演奏だったといっていいだろう。その結果なのかどうかはわからないが、第3楽章、昨日はなかったキズがかなり目立ってしまった。しかしそんな些細なことはどうでもよいのである。本当に、どうでもよいことである。これだけ挑戦的な音楽を実現した意義はとても大きい。東響は、もともとチャレンジングなオケなのだから。これからも、ノット監督にはこういう音楽を作っていってもらいたいものだ。

 

そして後半のブラームス1番。昨日は冒頭やや音が軽く聞こえてしまったのだが、今日はホールのせいもあり、私の座席位置のせいもありなのか、昨日に比べると重めの音がした。

昨日も熱い演奏だったが、今日はそれ以上に完成度が高い。これほどハイレベルのブラ1を在京オケが演奏できるとは…

昨日以上に細かい部分まで徹底して磨き上げられているのがすごい。何より驚いたのは第4楽章で、昨日はやや速めのテンポで熱くぐいぐいと進んで行ったのに、今日はやや遅めのテンポで陰影が濃い。なにか、第4楽章しばらくローな感じで進んで行ったので、コーダでの爆発感が半端ではなかった。コーダのファンファーレの重厚な響きは格別。一音一音がものすごい音圧!

 

これだけのすごい演奏ゆえ、当然にノットにソロ・カーテンコールあり。このテンションでヨーロッパでも演奏してもらいたい。

昨日と違い、今日はアンコールなし。今日のアンコールに備えてさんざんさらっていた楽員さんもいたらしいのだが…