読売日本交響楽団第559回定期演奏会を、サントリーホールにて。指揮は音楽監督のシルヴァン・カンブルラン。

ベルリオーズ:序曲「宗教裁判官」 作品3
デュティユー:チェロ協奏曲「遥かなる遠い世界」(Vc:ジャン=ギアン・ケラス)
(アンコール)バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番から「プレリュード」
ブルックナー:交響曲第3番 ニ短調 「ワーグナー」(第3稿)

フランス人指揮者で現代音楽を得意とし、シュトゥットガルト歌劇場のGMD(音楽総監督)であるシルヴァン・カンブルランのブルックナーというのは、ちょっと意外といえば意外。読響では、昨年4月に7番を演奏していて私も聴いているが、昨年のことだというのに、びっくりするくらいその演奏について何も覚えていない。そのときの感想はこちら
http://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12012792125.html 

さて今回は3番。ここ数年、日本で演奏頻度が増えている曲であるが、版があまりにたくさんあって一筋縄ではいかないところだ。私が実演で聴いたことがあるのは
1998年 ブロムシュテット/N響(1873年ノヴァーク版)
2006年 同上(第1稿)
2007年 スクロヴァチェフスキ/読響(ノヴァーク版。1889年版だったと思われる)
2013年 マゼール/ミュンヘン・フィル(1889年ノヴァーク版)
2016年 バレンボイム/シュターツカペレ・ベルリン(1877年エーザー版)
今回は「第3稿」。大まかに言って版は3つあって、その最後の稿で、上記の中では1889年版がそれに当たる。2013年のマゼール最後の来日公演が壮絶な名演で、あれを超える演奏は今後出てこないだろう。
当初第2稿と発表されていたのが、最終的に第3稿での演奏となったようだが、カンブルラン自身まだこの曲をそれほど演奏していないのであろうか。しかし、カンブルランの流れるようなブルックナー、これはこれで意外によかったのである。
縦の線をかみしめるようなブルックナーとは違って比較的すいすいと流れていくのが心地よい。そしてトゥッティの音は濁らずなかなか絶妙なブレンドで、重厚感よりも抜けの良い明るさが感じられる。
オケの出来もなかなかよい。冒頭の有名なトランペットも、その後3本で吹奏されるフレーズも非常に深くいい音がした。

前半はフランス音楽2つ。艶やかで快活なベルリオーズに続いて演奏されたデュティユーの名作は、ケラスのチェロの音が素晴らしい!冒頭、やや暗く深い音で始まったのだがその後七変化し、コーヒーのような濃く苦みが効いた音からシャンパンのようなはじける音までを幅広く表現。
このデュティユー作品、聴感上は現代音楽ながら、様式は比較的古典的なのでとても聴きやすい音楽である。オケの明るめの音が作品に合っている。
ケラスがアンコールで弾いたバッハは、なんともしっとりとした軽めのテイスト。