ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016のテーマはla nature ナチュール - 自然と音楽。年々テーマが抽象的でいまひとつよくわからなくなってきているし、今年はいわゆる目玉公演が少ない。私が興味を持った目玉公演は、ピエール・ロラン・エマールによるメシアン「鳥のカタログ」3公演ぐらい。
そのうえ、出演する演奏家も総じて例年より少々見劣りするといっては失礼か。昨年1公演のみを指揮した巨匠ミシェル・コルボ、今年は来日せず。
というわけで、1日目は絞って2公演のみ参加。

① 公演番号125 ホールB7
サイモン・サヴォイ(ピアノ)
ローザンヌ声楽アンサンブル
ダニエル・ロイス(指揮)
プーランク:7つの歌
ドビュッシー:シャルル・ドルレアンの詩による3つの歌
ラヴェル:3つの歌
ヒンデミット:リルケの詩による6つのシャンソン
フォーレ:魔人たち(ジン)op.12、ラシーヌの賛歌 op.11

例年LFJで来日している巨匠ミシェル・コルボが創設したローザンヌ声楽アンサンブル。この合唱団、ラテン的な明るさと柔らかさが特徴である。
この日の公演もB7というデッドなスペースで、しかも私の席はかなり前方で直接音が聞こえる場所。この環境で聴くと、この合唱団の音程の微妙さやアンサンブルの粗さが露呈。声質はやはり明るめで柔らかくしなやかであるが、ドビュッシーもラヴェルもヒンデミットもフォーレもホールのせいか同じ音色で聞こえてしまった。
合唱団は総勢25名、ピアニストはフォーレのみだったので、その前までは合唱団に参加していた。フォーレの2曲、曲順がアナウンスなしで逆転。

② 公演番号157 ホールD7
アブデル・ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)
グラナドス:ゴイェスカス—恋をするマホたち

ジャン・クロード・ペヌティエがフォーレの夜想曲全曲を2回に分けて弾く予定で、私は2回ともチケットを買っていたのだが、直前になって急病とのことでキャンセル。第1回はLFJ常連のエル=バシャが代役を引き受けた。
冒頭、ルネ・マルタンが現れ、急な変更の謝罪。
エル=バシャ、急な代役にもかかわらずなかなか聴く機会がないゴイェスカス全曲を弾くということで、これはこれで聞きものである。一部であれば、ラローチャの演奏で聴いたことがあるのだが。チッコリーニはアンコールで取り上げていた。
この人らしい、端正な語り口で極めて上品な演奏で、音色は中庸でやや淡めなのはこの人の持ち味だろう。ラローチャの、あの強烈な太陽のような濃い音ではないが。全6曲のバランスと集中力は卓越したものがある。