東芝グランドコンサート2015 トゥガン・ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団来日公演の最終日(ミューザ川崎シンフォニーホール)。
ショパン : ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 ( ナショナル・エディション )
ユリアンナ・アヴデーエワ ( ピアノ )
(ソリスト・アンコール)ショパン:ワルツ第5番
リムスキー=コルサコフ : 交響組曲 『 シェヘラザード 』 Op.35
(アンコール)
ビゼー:カルメン第3幕前奏曲
チャイコフスキー:くるみ割り人形~トレパーク
ビゼー:カルメン第1幕前奏曲
素晴らしい!シェエラザードを聴いていて、アドレナリンが出まくった!
ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル国立管、おそらく今最高にいい状態なのではあるまいか。
先日のサントリー公演でもそう思ったが、出てくる音が、本当に洗練の極みと言っていいほどなのである。
しかし、この洗練を、単に「フランス的」などという形容で片付けてはなるまい。パリ管のような、いかにもフランス的エスプリを感じさせる明るく華やかな音ではないのだ。もちろん、いかにもフランスのオケらしい明るさや華やかさもあるのだが、その一方でチェロやコントラバスなどの低音楽器の手応えをしっかりと感じることができて、意外に重い音がするのである。これは監督であるソヒエフの要求する音なのかもしれない。
このコンビ、2012年に来日した際に同じシェエラザードをみなとみらいホールで演奏したのだが、そのときの感動は今でも忘れることができない。今日の演奏と比べると、色彩感は前回の方が勝っているかもしれないが、完成度の高さは前回同様。ちなみに、前回は客席ががらがらだったのだが、熱狂度合いは前回の方がすごくて、オケが引いたあとにソヒエフが呼び出されていた。
いずれにせよ前回も今回も、私が実演で聴いたシェエラザードのなかでは最高の演奏だ。この音絵巻として名高い交響組曲が、壮大な交響曲のように聞こえたのである。
そして、美人すぎるコンサート・ミストレス、ジェヌヴィエーヴ・ロランソーのヴァイオリンソロが実に優美で、幻想的なこの曲のソロとしてはぴったり!しびれてしまった。第3楽章あたりでもうノックアウト状態、ロランソーが率いる弦セクションのシルクのような輝きに涙が出そうになる。この第3楽章における、フルートやクラリネットがスケールを奏でる部分の弱音の扱いは本当に見事だったし、ささやきから絶叫まで、感情のうねりが大きい。続く第4楽章のリズムの切れの良さと推進力はただものではない。
オケは実にいい。ホルンの輝きは一級品だが、過度に明る過ぎないのがよい。オーボエ、バソン、クラリネット、フルート、みなすごくいい音なのだが明るすぎない。実にデリケートな味付けがされている感がある。
前半は2010年ショパンコンクールの覇者、アブデーエワの弾くショパン。なんという贅沢な演奏会だろうか。アブデーエワのショパン、フォルムを崩さずテンポの揺れがほとんどないのはアルゲリッチなどとは対照的。極めて正攻法なのに説得力があるのはさすがである。女性ピアニストが弾くショパンを聴いて言うのもなんだが、ショパンはやはり男の音楽だと痛感してしまった。女性が弾くショパンだからこそそう感じられたのだろうか。いずれにせよ、こういう甘さのないショパンの演奏は私の好みである。
ピアノはスタインウェイだった。ミューザという会場のせいか、非常に粒立ちがよく明快な音色だったと思う。
オケパートがちょっと従来聴いてきたものと違っていて、ヴァイオリンが1オクターヴ高い音を出したり、フレーズをスタッカート気味に切ったり。「ナショナル・エディション」とのことだが、1500円もするプログラムを買わなかったので従来の版とどのような違いがあるのか、よくわからない。
オケのアンコール、いつも通りカルメンの3幕と1幕への前奏曲があり、その間にトレパーク。
次回来日時は、今までのような「いかにも」のプログラムだけではなくて、モーツァルト、ベートーヴェンなどの独墺系作品や、ロシア作品でもショスタコーヴィチやプロコフィエフの尖った作品があってもいいのではなかろうか。
それにしても今回の東芝グランドコンサート、ソリスト付きでS席14,000円と、来日オケにしては良心的価格だったのはうれしい。先週のチョン&東フィルのS席が1万円超えだったことを思うと驚き。もっともこのオケ、前回の2012年来日時、カジモト招聘でもS席16,000円だった。マネジメント会社が良心的ということなんだろうか?

ショパン : ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 ( ナショナル・エディション )
ユリアンナ・アヴデーエワ ( ピアノ )
(ソリスト・アンコール)ショパン:ワルツ第5番
リムスキー=コルサコフ : 交響組曲 『 シェヘラザード 』 Op.35
(アンコール)
ビゼー:カルメン第3幕前奏曲
チャイコフスキー:くるみ割り人形~トレパーク
ビゼー:カルメン第1幕前奏曲
素晴らしい!シェエラザードを聴いていて、アドレナリンが出まくった!
ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル国立管、おそらく今最高にいい状態なのではあるまいか。
先日のサントリー公演でもそう思ったが、出てくる音が、本当に洗練の極みと言っていいほどなのである。
しかし、この洗練を、単に「フランス的」などという形容で片付けてはなるまい。パリ管のような、いかにもフランス的エスプリを感じさせる明るく華やかな音ではないのだ。もちろん、いかにもフランスのオケらしい明るさや華やかさもあるのだが、その一方でチェロやコントラバスなどの低音楽器の手応えをしっかりと感じることができて、意外に重い音がするのである。これは監督であるソヒエフの要求する音なのかもしれない。
このコンビ、2012年に来日した際に同じシェエラザードをみなとみらいホールで演奏したのだが、そのときの感動は今でも忘れることができない。今日の演奏と比べると、色彩感は前回の方が勝っているかもしれないが、完成度の高さは前回同様。ちなみに、前回は客席ががらがらだったのだが、熱狂度合いは前回の方がすごくて、オケが引いたあとにソヒエフが呼び出されていた。
いずれにせよ前回も今回も、私が実演で聴いたシェエラザードのなかでは最高の演奏だ。この音絵巻として名高い交響組曲が、壮大な交響曲のように聞こえたのである。
そして、美人すぎるコンサート・ミストレス、ジェヌヴィエーヴ・ロランソーのヴァイオリンソロが実に優美で、幻想的なこの曲のソロとしてはぴったり!しびれてしまった。第3楽章あたりでもうノックアウト状態、ロランソーが率いる弦セクションのシルクのような輝きに涙が出そうになる。この第3楽章における、フルートやクラリネットがスケールを奏でる部分の弱音の扱いは本当に見事だったし、ささやきから絶叫まで、感情のうねりが大きい。続く第4楽章のリズムの切れの良さと推進力はただものではない。
オケは実にいい。ホルンの輝きは一級品だが、過度に明る過ぎないのがよい。オーボエ、バソン、クラリネット、フルート、みなすごくいい音なのだが明るすぎない。実にデリケートな味付けがされている感がある。
前半は2010年ショパンコンクールの覇者、アブデーエワの弾くショパン。なんという贅沢な演奏会だろうか。アブデーエワのショパン、フォルムを崩さずテンポの揺れがほとんどないのはアルゲリッチなどとは対照的。極めて正攻法なのに説得力があるのはさすがである。女性ピアニストが弾くショパンを聴いて言うのもなんだが、ショパンはやはり男の音楽だと痛感してしまった。女性が弾くショパンだからこそそう感じられたのだろうか。いずれにせよ、こういう甘さのないショパンの演奏は私の好みである。
ピアノはスタインウェイだった。ミューザという会場のせいか、非常に粒立ちがよく明快な音色だったと思う。
オケパートがちょっと従来聴いてきたものと違っていて、ヴァイオリンが1オクターヴ高い音を出したり、フレーズをスタッカート気味に切ったり。「ナショナル・エディション」とのことだが、1500円もするプログラムを買わなかったので従来の版とどのような違いがあるのか、よくわからない。
オケのアンコール、いつも通りカルメンの3幕と1幕への前奏曲があり、その間にトレパーク。
次回来日時は、今までのような「いかにも」のプログラムだけではなくて、モーツァルト、ベートーヴェンなどの独墺系作品や、ロシア作品でもショスタコーヴィチやプロコフィエフの尖った作品があってもいいのではなかろうか。
それにしても今回の東芝グランドコンサート、ソリスト付きでS席14,000円と、来日オケにしては良心的価格だったのはうれしい。先週のチョン&東フィルのS席が1万円超えだったことを思うと驚き。もっともこのオケ、前回の2012年来日時、カジモト招聘でもS席16,000円だった。マネジメント会社が良心的ということなんだろうか?
