ダン・エッティンガー指揮東京フィルハーモニー交響楽団のサントリー定期。
ロッシーニ:小荘厳ミサ曲

ソプラノ : ミシェル・クライダー
アルト : エドナ・プロフニック
テノール : ハビエル・モレノ
バス : 堀内 康雄
合唱 : 新国立劇場合唱団

私が大変に買っている東フィル常任指揮者のエッティンガー、彼がその東フィルの定期を振るのは、今シーズンたったの2回。今日はそのうちの1回である。
ロッシーニが最晩年に書いた小荘厳ミサ曲。「小」と着くのは、当初の編成が小さいからだとのこと。実際は「大」と付けてもいいくらいの、80分を超える大曲。その上、今日の編成はオケが14型対向配置の弦、木管こそ2管だが、金管はホルン、トランペット、トロンボーンが各4、ハープは指揮者を挟んで最前列に2人。合唱70名、独唱4名にオルガンと、大変な大編成なこともあり、大変に聴き応えがある演奏会だった。
この「小荘厳ミサ曲」、当然CDを持っているだろうと思っていたが、ない。ロッシーニの「スターバト・マーテル」は何枚か持っているので、それと勘違いしていたのだ。ちなみに小荘厳ミサ曲(オケ版)のCDは、マリナー、シャイー、ガンドルフィくらいしかカタログに見あたらない。
しかしこの曲、なかなかの名曲である。聴いたことがあるのはテノール独唱の第4曲「ドミネ・デウス」くらいだが、前半最後の第7曲「クム・サンクト・スピリトゥ」の輝かしい響きは圧倒的だし、第9曲「クルチフィクスス」のソプラノ独唱は感動的。

その上、今日の演奏はかなりの高水準だったと言えよう!エッティンガーはいつもながらスケールの大きな音楽を作っていて、この曲の輪郭をクリアに描き出すことに成功している。今日驚いたのはオケで、実に美しく響く演奏。舞台右手に一線に並べられたトランペット、コルネットとトロンボーンの音はとても立体的で奥行きがあったし、弦セクションは弱音がとても洗練されていて、ただただ見事である。
そして新国立劇場の合唱団、こちらがまたいつもながら音程もバランスも見事で、聴いていて大変に気持ちがよい。独唱陣、私の席(LC)からだとやや男声2名が弱かったが、女声陣はなかなか。ソプラノのミシェル・クライダーは1996年にウィーンでルイージの指揮のもと、蝶々夫人を歌ったのを聴いたことがあって、その歌唱力は圧倒的だった。

無名曲ゆえか、客席は空席が目立つ。7割程度だろうか。