ル・プロジェ・エマールの2日目。ピエール=ロラン・エマールのピアノで、
ドビュッシー:前奏曲集第2巻
アイヴス:ピアノ・ソナタ第2番「マサチューセッツ州コンコード1840-60年」

トッパンホールの素晴らしい企画、ル・プロジェ・エマール、今日2日目は「引用」という点で共通点がある作品。
アイヴス作品は聞いていて、何らかの引用があることはわかる。一番わかりやすいのは、ベートーヴェンの交響曲第5番の「ジャジャジャジャーン」というフレーズで、これは全楽章に使われているが、第2楽章で民謡風の旋律やら、パレードの音楽のようなものやらも聞こえるし、それ以外でも、どっかで聴いたことがある旋律だけど何なのか思い出せないものが多数、明らかに引用されている。
これに対して、ドビュッシーの第2巻前奏曲では、聴いてはっきりわかるのは第9曲「ピクウィック卿を称えて」における英国国歌、言われればわかるのが第12曲「花火」のラ・マルセイエーズ。青澤隆明氏の解説によれば、第11曲「交代する三度」ではストラヴィンスキーの「春の祭典」、第1曲「霧」、第6曲「奇人ラヴィーヌ将軍」では「ペトルーシュカ」の引用があるということなので、今日耳をダンボにして聴いていたのだが、このあたりはさっぱり引用されていることがわからないのだ。このあたりの引用について、具体的に関連性がわかる方がいらっしゃればご教授願いたいところである。

さて、前半の第2巻前奏曲集、後世のメシアン、ブーレーズにつながるモダンな音楽であることは周知の通りであるが、今日のエマールの演奏、もちろんそうしたことを感じさせながらも、音色が一昨日の第1巻につながる、とても温かい音色だったことが印象的である。現代へつながる作品であると同時に、過去からの架け橋でもある音楽という位置づけか。一昨日の演奏と同様、理知的に全ての音色と音量がコントロールされているのがすごい。わずかながら第1巻のほうがそのコントロールの幅が広いというか、完成度は高いかも。今日はNHKのカメラが入っていたので、そのあたりもちょっと演奏には影響したか?いや、それでも相当な完成度ではある。

後半はアイヴス。この曲、前から名前は知っているのだけれども、あまりよく知らない。自称現代音楽ファンとしては恥ずかしいことだ。ムラロのCDは持っているのだが。そんなわけで、NMLにエマールの音源がアップされているので、これで予習。ところがiPhoneだと地下鉄に乗ると途中で止まってしまう。そんなわけで、4楽章まで予習できず。ちなみに、会場でも売られていたこのエマールのCD、改訂版によっており、1楽章にヴィオラ(T・ツィマーマン)、そして(聴いてないが)4楽章にフルート(パユ)が加わっている。
しかしこの音源での演奏よりも、今日の実演のエマールのほうがずっとずっとよい!これだけのたくさんの音符が、エマールは混濁させることももちろんなく、引用フレーズもはっきりとわかるし、第2楽章のぶっ飛んだ感じはもう山下洋輔みたいで、あまりの音の多さとでかさと壮絶さに、終わったあと会場がシーンとなったと思ったら携帯が鳴った。切っとけと言いたい。第3楽章の反動的で静謐な音楽は、交響曲第4番に通じるものがある。
この曲はさすがにエマールも譜面を見て弾いていた。途中2楽章だったか、黒い棒のようなものがピアノから落ちて、エマールが演奏しながら拾い上げて、その後また演奏したまま譜めくりの女性に渡すという神業!ツイッターによれば、トーンクラスター用の器具だそうで。私の席からはどう使っているのか、見えなかった。