ラドゥ・ルプーのピアノ・リサイタルを、東京オペラシティコンサートホールにて。
シューベルト:
16のドイツ舞曲D783
即興曲集D935
ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960
(アンコール)
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958から 第2楽章
シューベルト:楽興の時D780から 第1番ハ長調

何という、安らぎと優しさにあふれた音楽なんだろうか…涙が出そうだ。現代人の疲れた心に染み渡る、癒しの音楽!風邪気味で滅入っていた私に、これほどまでの特効薬はなかろう。まさに私は、こういうシューベルトを欲していたのだ!

「1000人にひとりのリリシスト」と言われるルプーの音楽は、とてもみずみずしく、特にシューベルトは歌に満ちている。とことんあふれる歌。もう67歳なのである。でも、昨日聴いた、70歳のポリーニほど痛々しい感じはない。
彼のピアノを初めて聴いたのは1998年の来日時で、ベートーヴェン、ヤナーチェク、ラヴェルといったプログラムだった。とても無愛想だったのを覚えているが、今日もそんな感じ。2001年の来日のときは行ってなくて、2010年の来日のときはチケットを買っていたがキャンセルになった。京都で1回だけ公演したが、不調のため帰ってしまったそうだ。

素晴らしいD960が終わったあとでも、ルプーは全く満足なんかしてないといった様子である。ちょっとキズもないわけじゃないし、彼としては満足いかなかったのかもしれない。しかし、アンコールは2曲やってくれた。アンコールのソナタ19番2楽章、ひとつひとつの音をかみしめるように、じっくりと弾き込まれたシューベルトの歌。これまた恐ろしいくらいに素晴らしくて、まさに恍惚としてしまう。

今日は会場がかなり埋まっていて、オペラシティは小さいこともあるが、満席に近かったのではないか。S12,000円~C4,000円という価格設定であれば、このくらい埋まるということだろう。ちなみに今日の私の席、舞台真横の3階、音はちゃんと届いてよく聞こえるがたったの4,000円である!会場に、アンデルシェフスキの姿が。