ベルント・アロイス・ツィマーマン「軍人たち」を、フェルゼンライトシューレにて。
演出:アルヴィス・ヘルマニス
指揮:インゴ・メッツマッハー
ウィーン・フィルハーモニー
ヴェーゼナー:アルフレッド・ムッフ
マリー:ローラ・エイキン
シャルロッテ:タニヤ・アリアネ・バウムガルトナー
ヴェーゼナーの年老いた母親:コルネリア・カリッシュ
ストルツィウス:TOMASZ KONIECZNY
ラロッシュ伯爵夫人:ガブリエラ・ベニャチコヴァ
その息子:マティアス・クリンク
その他余りに多いので省略
これはまた、ものすごいものを聴いた。強烈すぎる!
ベルント・アロイス・ツィマーマン(1918~1970)の傑作「軍人たち」、2008年の新国立劇場の素晴らしいプロダクションが記憶に新しい(演出:ウィリー・デッカー、指揮:若杉弘)。この20世紀最高傑作の一つと言ってよいであろうオペラを再度観ることができるのは、実に幸せである。上演が困難を極める作品だからだ。
ツィマーマンは1970年に自殺している。また、本作品の台本はミヒャエル・ラインホルト・レンツ(1751~1792)。ベートーヴェンより古い人だ。この人も発狂して早死した人である。
そして、この作品もやはり、狂気に満ちた、救いのない作品である。
単純に言えば、純粋だった娘が軍人たちの慰み者になり、物乞いにまで落ちぶれるというストーリーだ。
1965年2月初演。全曲の初演に至るまで、演奏不可能を可能にすべく、部分演奏を繰り返したそうだ。初演の指揮は、明日明後日のモーツァルトマチネでタクトを執る巨匠ミヒャエル・ギーレンである。ちなみにメッツマッハーはフランクフルト歌劇場で、ギーレンのもとで働いた人である。
とにかく、強烈な音楽だ。オケは総勢100名以上。打楽器がとにかく多くて、その上ジャズコンボもいて、通常のオペラハウスだとピットに入り切らない。新国立劇場での上演では、ジャズコンボは左手のバルコニーに、ピットに収まらない打楽器は練習室からPAで中継されたはず(作曲者もそれを容認している)。
今日の演奏、フェルゼンライトシューレの横に非常に長い舞台を活かして、舞台の両袖に打楽器、左手にジャズコンボが配置された。ピットの一番左手にプロンプタが配置されて、歌手にキューを出す。
演出はエグいところもあるものの、バイロイトのとんがった演出に比べたらずっとわかりやすいものではある。最前列の歌手たちが歌って演技する舞台の後ろに、窓がいくつかある壁があって、その窓の奥ではホンモノの馬がいて、女性が乗馬する場面が見える。正直、馬の糞尿の臭いが会場に漂う。あと、性行為が行われるシーンでは干し草が効果的かどうかわからないが使用される。
最前列の舞台のすぐ後ろの壁には写真が映し出されるのだが、古い春画(写真である)や、マリーが物乞いになる最後のシーンでは、顔がはれあがったり、鼻がもげたりした人の相当気持ち悪い写真が映し出される。
この演出、マリーが普通の純粋な少女から、売春婦に転落している過程があまりはっきりわからないのはなぜだろう?いや、最初から最後までマリーは哀れな女性として描かれている気がする。
度肝を抜かれたのは、舞台のかなり高い位置に左右に張られたロープの上を、マリーに扮した女性(サーカス団員だろう)が、長い棒でバランスを撮りながら、舞台左端から右端まで数十メートル歩いたこと!今日の公演はCDと映像になるので、ぜひ映像で確認していただきたい。よく見ると落下防止のため、女性の背中にはピアノ線が付いてはいたが、落下せずに渡り切ったのはものすごいことだ。
歌手、ルルのタイトルロールで有名なローラ・エイキンのしなやかなコロラトゥーラが実に見事!
強烈だったのはラロッシュ伯爵夫人を歌ったベニャチコヴァで、この人は既に40年のキャリアを持っているそうだ。音程も全く問題なかったが、年齢のせいかやや声がキンキンして、第三幕第4場、第5場の見せ場はちょっと聴いていて残念ではあった。
ギーレンとのCDで有名なカリッシュ、出番が少ないからか、あまり印象がない。シャルロッテ役のバウムガルトナーは高い水準だった。
男声歌手はみな同じ服装で、ちょっと見分けるのが大変だが、ストルツィウス役のKONIECZNYは重い声でなかなかであった。
しかし、今日の公演ですごかったのはオケだろう。2013年秋から新日本フィルのCONDUCTOR IN RESIDENCEに就任するメッツマッハー、
複雑怪奇なスコアを丹念に読み解いているのは見事。指揮台のスコアを覗いたら、なんと30段くらいあった!もっとも、このような公演でオケがウィーンフィルである必然性はそれほどないような気はするが、それでも弦楽器の艶やかさや官能的表現は当然に素晴らしい。
演出:アルヴィス・ヘルマニス
指揮:インゴ・メッツマッハー
ウィーン・フィルハーモニー
ヴェーゼナー:アルフレッド・ムッフ
マリー:ローラ・エイキン
シャルロッテ:タニヤ・アリアネ・バウムガルトナー
ヴェーゼナーの年老いた母親:コルネリア・カリッシュ
ストルツィウス:TOMASZ KONIECZNY
ラロッシュ伯爵夫人:ガブリエラ・ベニャチコヴァ
その息子:マティアス・クリンク
その他余りに多いので省略
これはまた、ものすごいものを聴いた。強烈すぎる!
ベルント・アロイス・ツィマーマン(1918~1970)の傑作「軍人たち」、2008年の新国立劇場の素晴らしいプロダクションが記憶に新しい(演出:ウィリー・デッカー、指揮:若杉弘)。この20世紀最高傑作の一つと言ってよいであろうオペラを再度観ることができるのは、実に幸せである。上演が困難を極める作品だからだ。
ツィマーマンは1970年に自殺している。また、本作品の台本はミヒャエル・ラインホルト・レンツ(1751~1792)。ベートーヴェンより古い人だ。この人も発狂して早死した人である。
そして、この作品もやはり、狂気に満ちた、救いのない作品である。
単純に言えば、純粋だった娘が軍人たちの慰み者になり、物乞いにまで落ちぶれるというストーリーだ。
1965年2月初演。全曲の初演に至るまで、演奏不可能を可能にすべく、部分演奏を繰り返したそうだ。初演の指揮は、明日明後日のモーツァルトマチネでタクトを執る巨匠ミヒャエル・ギーレンである。ちなみにメッツマッハーはフランクフルト歌劇場で、ギーレンのもとで働いた人である。
とにかく、強烈な音楽だ。オケは総勢100名以上。打楽器がとにかく多くて、その上ジャズコンボもいて、通常のオペラハウスだとピットに入り切らない。新国立劇場での上演では、ジャズコンボは左手のバルコニーに、ピットに収まらない打楽器は練習室からPAで中継されたはず(作曲者もそれを容認している)。
今日の演奏、フェルゼンライトシューレの横に非常に長い舞台を活かして、舞台の両袖に打楽器、左手にジャズコンボが配置された。ピットの一番左手にプロンプタが配置されて、歌手にキューを出す。
演出はエグいところもあるものの、バイロイトのとんがった演出に比べたらずっとわかりやすいものではある。最前列の歌手たちが歌って演技する舞台の後ろに、窓がいくつかある壁があって、その窓の奥ではホンモノの馬がいて、女性が乗馬する場面が見える。正直、馬の糞尿の臭いが会場に漂う。あと、性行為が行われるシーンでは干し草が効果的かどうかわからないが使用される。
最前列の舞台のすぐ後ろの壁には写真が映し出されるのだが、古い春画(写真である)や、マリーが物乞いになる最後のシーンでは、顔がはれあがったり、鼻がもげたりした人の相当気持ち悪い写真が映し出される。
この演出、マリーが普通の純粋な少女から、売春婦に転落している過程があまりはっきりわからないのはなぜだろう?いや、最初から最後までマリーは哀れな女性として描かれている気がする。
度肝を抜かれたのは、舞台のかなり高い位置に左右に張られたロープの上を、マリーに扮した女性(サーカス団員だろう)が、長い棒でバランスを撮りながら、舞台左端から右端まで数十メートル歩いたこと!今日の公演はCDと映像になるので、ぜひ映像で確認していただきたい。よく見ると落下防止のため、女性の背中にはピアノ線が付いてはいたが、落下せずに渡り切ったのはものすごいことだ。
歌手、ルルのタイトルロールで有名なローラ・エイキンのしなやかなコロラトゥーラが実に見事!
強烈だったのはラロッシュ伯爵夫人を歌ったベニャチコヴァで、この人は既に40年のキャリアを持っているそうだ。音程も全く問題なかったが、年齢のせいかやや声がキンキンして、第三幕第4場、第5場の見せ場はちょっと聴いていて残念ではあった。
ギーレンとのCDで有名なカリッシュ、出番が少ないからか、あまり印象がない。シャルロッテ役のバウムガルトナーは高い水準だった。
男声歌手はみな同じ服装で、ちょっと見分けるのが大変だが、ストルツィウス役のKONIECZNYは重い声でなかなかであった。
しかし、今日の公演ですごかったのはオケだろう。2013年秋から新日本フィルのCONDUCTOR IN RESIDENCEに就任するメッツマッハー、
複雑怪奇なスコアを丹念に読み解いているのは見事。指揮台のスコアを覗いたら、なんと30段くらいあった!もっとも、このような公演でオケがウィーンフィルである必然性はそれほどないような気はするが、それでも弦楽器の艶やかさや官能的表現は当然に素晴らしい。