ダニエル・ハーディング指揮新日本フィルのトリフォニー・シリーズ2日目を、すみだトリフォニーホールにて。
シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」
R・シュトラウス:英雄の生涯(Vn:崔文洙)

前回のサントリー定期のエルガーがあんまりしっくり来なかったし、そもそも今までのハーディング&新日本フィルの演奏があんまり感動できなかったので、今回も正直あまり期待はしていなかったのだが…この日の演奏、完全脱帽である。

前半のシューベルト、とことん美しい演奏である。何か特別なことをしているわけでもなく、シューベルトの書いた音のひとつひとつを丁寧に紡いでいく姿勢は、指揮者の個性というよりこのオケの最近の特質なのではないだろうか。弦は14型対抗配置。
そして、この演奏を聴いて痛感したのは、新日本フィルはやはり本拠地であるこのトリフォニーで聴くのが一番であるということ。響き過ぎず、と言って乾きもせず絶妙なバランスで聞こえるこの素晴らしいホールで彼らは練習しているのだから、彼らの音もこのホールに合わせて作られているはずである。

弦を16型に拡大した「英雄の生涯」、実に素晴らしい!こうした後期ロマン派でも、比較的あっさりした音楽を聴かせることが多かったハーディングだが、この日の演奏は全くその「薄さ」を感じさせないものであった。しっかりした低音に支えられ、うねりのようなものすら感じられる演奏だった。「英雄の伴侶」のヴァイオリンソロはコンマスの崔さん、美音で音程も安定していて見事!「英雄の戦場」はやや遅めのテンポで重戦車のような迫力。オケは、キズもないわけではなかったけれど最近のハーディングとの演奏のなかではかなりいいと思う。

ハーディングのレパートリーは広く、どんな音楽でもそつなくこなすのはやはり彼が天才だからにほかならない。実際、テクニックだけ取っても、「英雄の生涯」でのバトンなど、本当に巧いなぁ、と感服してしまうのだ。一方で「器用貧乏」になってしまわないといいんだけど、と変な心配もしてしまうのだ。