ユベール・スダーン指揮東京交響楽団のサントリー定期。曲目は

モーツァルト:交響曲第25番ト短調

モーツァルト:シンフォニア・コンチェルタンテ(Vn:ライナー・キュッヒル、Vla:西村眞紀)

シェーンベルク:浄夜Op.4(コンサートマスター:ライナー・キュッヒル)


今日は今朝からBPOのチケットが取れず機嫌悪かったが、この定期を聴いてだいぶ機嫌が直った。なんといっても、3曲とも私が死ぬほど好きな曲なんである。


キュッヒルさんが弾くとあって、チケットは完売!


前半のモーツァルト。25番、こんなすごい演奏を聴いたのは初めてである。14型、ホルン4本でなんとアシに首席のハミルさん。というか、ハミルさんは吹いてなかったのでは?

25番て、モーツァルトの中では40と並んでト短調の暗い音楽というのが一般的イメージだろう。と思っているのは我々だけなんだろうか、スダーンさんの作る音楽はそのような固定観念を完全に排除したもの!東響の比較的明るい響きで、我々が持つ既成のイメージとは全く異なる明るい音楽(こういうと言い過ぎか?)一番驚いたのは3楽章メヌエットの中間部。ここはホルンと木管だけで奏される部分だが、この部分の軽妙洒脱さといったらない。こんな演奏は初めて。実に細やかな味付けがなされている。


続くシンフォニア・コンチェルタンテでキュッヒルさん登場。今日は、東響はコンマス5人のうち大谷さんを除く4人が参加という豪華さである。25番のコンマスはニキティンさん、コンチェルトは高木さん。

キュッヒルさんも西村さんも、冒頭のトゥッティから弾き始めるわけだが、冒頭の音を聞いて思わずにやりとしてしまった…キュッヒルさんの音がでかいのだ。

キュッヒルさん、ウィーン・フィルでも圧倒的にオケをリードするタイプで、ときとして彼の音しか聞こえないほど。数年前、ザルツブルク音楽祭でムーティ指揮のウィーンフィルを聴いたとき、私の席は1階の右よりだったのだが、第一ヴァイオリンの音がキュッヒルさんの音しか聞こえなかったことをよく覚えている。ということは、現在のウィーンフィルの弦の音を彼が作っているということだ。

今日の二重協奏曲、そんなわけで、西村さんのほうが音程はいいけどキュッヒルさんに比べると音がかなり小さく聞こえて、結果として主役は完全にキュッヒル!もともとこの曲、ヴィオラもすごい存在感であるのだが…


後半は浄夜。私がマラ9やマラ6やトリスタンと同様、死ぬほど好きな音楽だ。この曲の旋律が頭に浮かぶと、延々続いて私の脳が歌い続ける。このくらい魅力的な音楽である。

コンマスはキュッヒルさん。明らかに東響の音ではなく、第一ヴァイオリンだけちょっとウィーンフィルになる。

浄夜ってこれだけの名曲なのに、ウィーンフィルの録音は皆無。私が知る限り、古いミトロプーロスの録音しかない。確か、ブーレーズが定期で、大地の歌の前プロでやったはずだが…とにかく、そのウィーンフィルのコンマス、キュッヒルさんで浄夜を聴けたのは感激であることは確か。ソロはもちろんだが、キュッヒルさんがオケをひっぱるひっぱる…まあ、音だけで言えば、東響の音とキュッヒルさんの音(=ウィーンフィル?)はやっぱりちょっと異質。

が、私個人的には、今日の浄夜、キュッヒルさんよりスダーンさんに敬意を表したい!いったい、どれだけ厳しくて綿密なプローベをしたんだろうか…精緻の極みの演奏である。特に第2ヴァイオリンと、2声に分かれるヴィオラがとても雄弁。キュッヒルさんのコンマスでなくても、仮にニキティンさんや高木さんでも素晴らしい演奏だったと思う。


モーツァルトは12型、シェーンベルクは16型。モーツァルトは普通にコントラバスが右奥の配置だが、シェーンベルクはコントラバスが舞台後方に陣取る、ノリントンシフトである。


ところで、本日このスダーン&東響のブルックナー8番のCD(及びSACD)が会場で発売されており、今まさにそのSACDを聴いているが…素晴らしすぎる!