ベルリン・フィル八重奏団を東京オペラシティにて。
曲目は
モーツァルト:ホルン五重奏曲変ホ長調K407
モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調K581
ベートーヴェン:七重奏曲変ホ長調Op.20
(アンコール)シューベルト:八重奏曲ヘ長調~III. Allegro vivace - Trio
メンバーは
ラティツァ・ホンダ=ローゼンベルク(第1ヴァイオリン)←ローレンツ・ナストゥリカ=ヘルショコヴィチ
ロマーノ・トマシーニ(第2ヴァイオリン)
ヴィルフリート・シュトレーレ(ヴィオラ)
クリストフ・イゲルブリンク(チェロ)
エスコ・ライネ(コントラバス)
ヴェンツェル・フックス(クラリネット)
シュテファン・イェジェルスキ(ホルン)←ヤデク・バボラーク
ヤッコ・ルオーマ(ファゴット)←ベンツェ・ボガーニ
と、ご存じの通り3名が原発事故の影響で来日中止。
多くのファン同様、一番のがっかりはバボラークの来日中止である。まあ、致し方ない。
さて、今回のメンバーのうち、第一ヴァイオリンのローゼンベルク、ファゴットのルオーマはBPO団員ではない。彼らは交代した3名のうちの2名。
また、余談であるが、今回のメンバーのうち、BPO団員でカラヤン時代からいる人はトマシーニ、シュトレーレ、ライネ、イェジェルスキ。イゲルブリンクは89年4月入団だから、カラヤンの最後の演奏会(3月)にはかぶっていない。まあ、そんなことはどうでもいいか。
さらに余談だが、来日するはずだった第一ヴァイオリンのナストゥリカ、彼はミュンヘンフィルのコンサートマスターであって、BPO団員ではないが、BPO八重奏団のメンバーである。また同じく来日中止となったファゴットのボガーニも、ミュンヘンフィルの首席であってBPO団員ではない。
第1ヴァイオリンのホンダ=ローゼンベルク、チャイコフスキーコンクール2位の実績があり、上手い人であるが、やはり普段からオーケストラのアンサンブルの中にいる人の音ではないというのが正直な感想。よって、本日の演奏、素晴らしかったのだけれども、鉄壁のアンサンブルを誇るBPOらしさというのは若干後退していた。ヴィオラのシュトレーレ(この人はBPOの映像でよく見る人!)がかなり彼女に気を遣って励ましたり、ときにリードしていたのがとても印象的だった。個人的には、このシュトレーレさんとイゲルブリンクさんの中音域の弦楽器が、まさにBPOの鋼の音を支える音色!
前半のホルン五重奏曲。私は学生時代ホルンをやっていて、一度だけ室内楽をやったことがあるが、ホルンという楽器は金管だけあって音がでかいので、室内楽で吹くと音量をものすごく抑えないと周りの楽器から突出してしまう難しさがある。やはりそういう点でもイェジェルスキのホルンは実に見事であったが、やはり、首席であるバボラークの、まるで口笛でも吹くかのような驚異的なソロとはやはりちょっと違うのだ。
前半の2曲目のクラリネット五重奏。フックスの音って、何度聴いても本当にほれぼれする。天を舞うようなすばらしい響きで、いつもいつも幸福感に満たされてしまう。特にフェザータッチの弱音は絶品としか言いようがない。彼はオーストリア人であり、ウィーン・フィルのペーター・シュミードルの弟子。その音色はBPOのなかにあって極めてウィーン的である。
後半のベートーヴェン、もう何度聴いたことだろうか。前述の通り、アンサンブルが鉄壁-αくらいではあったが、十分満足が行く公演だった。
アンコールはシューベルトの八重奏曲から。こういう曲って、ずっと聴いていたいという気持ちにさせられる。
会場は9割くらいの入りだろうか。