ダニエル・ハーディング指揮新日本フィルのトリフォニー定期で、ブルックナーの交響曲第8番。


ハーディングは上旬のマーラー室内管(MCO)との来日公演後単身日本に残って、新日本フィルの定期とチャリティーを振る。ブルックナーの8番はその最初の演目。木曜日の多摩定期、金曜日のトリフォニー1日目に続き、今日はブル8、3回目の公演。

終演後の拍手喝采はものすごくて、トリフォニー定期ではなかなか珍しい。それに、終演後のオケのメンバーの表情が豊かで、いつもとはだいぶ違う雰囲気だ。ハーディング、音楽的な内容ももちろんであるが、震災後の日本の聴衆に対する姿勢で日本での評価をぐんと上げたのではないだろうか。今日も、演奏が終わるとすぐにホワイエに出てきて募金活動。その後、CDへのサイン会があったはずだ。


ハーディングのレパートリー、従来は古典が中心でロマン派だとマーラーがメイン。彼がブルックナーを振るのは、今回のこの日本が世界で初めてらしい。彼のブルックナー、私の事前予想ではやや薄口の淡々としたブルックナーだったのだが、結論から言うと半分くらい当たり、というところだろうか。

オケは大変によく完成されていて、井手さんトップのホルンの量感も素晴らしいし、古部さんのオーボエソロも心にしみいる。弦は15-14-12-10-8の両翼対向配置。コンマスの崔さんが大きく身体を揺らしてオケを引っ張っていく。ドイツ仕込み、近藤さんのティンパニがオケの音色をぐっと引き締めている。

ハーディングの指揮、第1楽章~第3楽章は割と淡々と進んだ。音自体が薄いというわけではないのだが、アゴーギクは少なめで、いわゆる「濃いめ」のごつごつしたブルックナーではない。しかし第4楽章は俄然雄弁で表情豊かになり、複雑怪奇なこの4楽章がとてもあっという間に過ぎていった。

最初に演奏したブルックナー8番としては、まずまずの演奏だったのではないだろうか。これからあちこちで演奏を繰り返していくうちに、さらに解釈に磨きがかかっていくものと思われる。


来週はいよいよマーラーの5番。震災時に予定されていた演奏会だと前プロにワーグナーがあったはずだが、カットされている。また、サントリー定期でやるはずだったハルサイはなくなった。残念。