ダニエル・ハーディング指揮マーラー室内管弦楽団の2日目(オーチャードホール)。
曲目は
ブラームス:交響曲第3番、第1番
(アンコール)第2番第3楽章
若きマーラー室内管、今日も素晴らしい演奏を聴かせてくれた!何より、渾身でムジツィーレンする姿勢がよい。音楽をすることが心の底から好きな連中の集まりなんだろう。一人一人が、ブラームスに対する共感を心の底から持っていて、ハーディングの棒のもとに一体となっている。
もともと、私はハーディングがそんなに好きだったわけではない。音楽がちょっと軽くてさっぱりしすぎていて、過大評価されているのでは?と思っていたくらい。ノン・ヴィヴラートですいすいと進む音楽は深みがないのでは?と思っていた。まるで、フルトヴェングラーやカラヤンのような巨匠の音楽作りに対するアンチテーゼのように聞こえた。すごくいいな、と思うことも3回に1回くらいはあったけれど。
それに、プログラムにもあったけれど、ダニエル・ハーディングっていう名前も軽い。山田太郎とか、鈴木一郎みたいだ。それに、小柄な彼は普通に歩いていると、もちろん若いせいもあるがまるでオーラがない。以前、私はザルツブルクの街中でショルダーバッグを提げて歩く彼を見つけたが、他の誰も彼に気づいていなかった。私の友人は伊勢丹相模原店で買い物中の見かけたそうだが、やっぱりただの兄ちゃんにしか見えなかったそうだ。
しかし、そのハーディングも、30代半ばになってだいぶ自分の音楽を確立してきたような気がする。昔はアーノンクールの亜流みたいな音楽をやっていたが、今は違う。彼独特の音楽というものをはっきりと聞くことができるようになった(ちなみに、彼の演奏は昨日も今日も、普通にヴィヴラートをかけた演奏である)。一昨年、新日本フィルに客演したときの幻想や、昨年スウェーデン放送交響楽団と来日した際のマーラの1番など、本当に彼ならではの新しい視点を感じさせてくれるものだった。そんなわけで、今私は彼の普通のファンになっている。
ちなみに私見であるが、彼の本領はウィーンフィルのような超名門オケを振ったときよりも、新日本フィルとかスウェーデン、そして今日のMCOのようなオケのほうがやりたいことがしっかり体現できていい演奏になると思う。若くしてウィーンフィルを振ったのはすごいことだが、やはりオケになめられているように感じられてならない。
前半の3番。弦は10-10-8-6-5(他の方のツイッターを見ると12型とあるから、1stVnは私の数え間違いかも)と小編成。よって響きはとてもすっきりしている。我々日本人の多くがブラームスに求める、「ドイツ的な重厚さ」というものはない。昨日のマーラー4番もそうだったが、ソナタ形式における展開部がとても雄弁で、まるで標題音楽を聴いているかのようだ。静かに終わるフィナーレ、昨日のマラ4のフラブラ野郎もおらず感動的(ちなみに昨日は、最後の最後、私のすぐ後ろのあたりで携帯で写真を撮った大馬鹿者がいた)。
後半のブラ1、弦五部は12-10-8-6-5。やはり冒頭の音は軽めではある。しかし、曲が進むにつれてオケメンバーのテンションは高潮。フィナーレの雄弁さはなかなか聴けるものではない。ハーディング、コーダでテンポをぐっと上げて、決めるところをしっかり決めてくる。
それにしても、2楽章の吉井瑞穂さんのオーボエソロ、ホントにほれぼれしてしまう…!実に伸びやかで、明るくはっきりした響き。このオケは20ヶ国以上のメンバーから構成される無国籍オケだが、私はラテン的な明るさを感じる。日本人の吉井さんの音にすら、それを感じるのだ。
アンコールは2番の3楽章。12日のザ・シンフォニーホールの公演は4番と2番をやるのだ。東京は3、1番のみ。2番、全曲聴きたい…
ところで、昨日のマラ4、今日のブラームス3、1番、ハーディングはすべて暗譜で振っていた。私の記憶では、彼は基本的に譜面を見て振っていたのだが…記憶違いかもしれません。