大塚茜フルートリサイタルを、東京文化会館小ホールにて聴く。曲目は

C.P.E.バッハ:ハンブルガー・ソナタ ト長調
フォーレ:幻想曲
佐藤敏直:フルート・ソロのための「舞」
ヴィドール:「組曲」
広瀬量平:岬のレクイエム~アルトフルートとピアノのための~2002
プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ長調 op.94

(アンコール)

ショッカー:シシリエンヌとスケルツォ~スケルツォ

安田芙充央:天上のフルート


大塚茜(Fl)、藤田雅(Pf)


なんとも意欲的な、素晴らしいプログラムである!バロックから現代まで、そしてエリア的にはドイツ、フランス、日本、ロシア。これだけ多彩なプログラムをこなすには、相当な表現の幅がなければならないだろう。もっとも、私が知っている曲は1曲もない…

冒頭にJ・S・バッハ「アヴェ・マリア」のあと、本プロ。


この多彩なプログラムのなかで、私が最も素晴らしいと思ったのは、日本の作品であった。前半の佐藤敏直「舞」、広瀬量平「岬のレクイエム」だ。こうした日本の作品の持つ深く、やや暗めの凛とした響きが、意外なことに彼女の音楽性にとても合っているように思ったのだ。

しかし素晴らしい無伴奏の「舞」の静かなエンディングで携帯が鳴る…信じられない。しかも、今日2度目だ!他人の振り見て我が振り直せ、というではないか…

広瀬作品のアルトフルートの深く沈んでいくような響きも印象的である。実は私、広瀬先生には中坊の頃演奏会でサインをいただいているが、当時から彼の東洋的な作風はとても好きである。

トリのプロコフィエフもとても明快なわかりやすい音楽である。プロコフィエフが疎開している時期の作品らしいが、op.94だから、戦後に書かれたop.100の第5交響曲に近い時期であり、とても平明でわかりやすい音楽。大塚さんがはっきりした音色と大変な熱演でとてもよかった。高域はとても力強いが、中低域の速いパッセージでやや音がくぐもった感じになるのは、今後の課題だろうか。藤田雅氏は伴奏者の域を超えた素晴らしいピアノを聴かせた。