ヴァシリー・ペトレンコ/NHK交響楽団のA定期を、NHKホールにて。曲目は
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ:小菅優)
(アンコール)ショパン:革命のエチュード
チャイコフスキー:マンフレッド交響曲
新年最初のN響定期は、割と渋いプロである。
指揮者のヴァシリー・ペトレンコ、英国ロイヤルリヴァプールフィルの首席であり、まだ34くらいの若さ。8頭身くらいの長身、痩身なので登場したとき少年かと思ったくらいだ。ちなみに、バイロイトの2013年新演出リングの指揮をするのは、キリル・ペトレンコ、この人とは別人だそうで、私は完全にごっちゃになっていた。
前半のコンチェルト、弦は12型。小菅のタッチは安定していて極めて明晰な音色である。オケの伴奏もしなやかであり、例えば第3楽章のカデンツァに入る前のフェルマータは爽快ですらある。
アンコールはショパンの革命。ここでは小菅の左手の動きがクリアに聞こえたのが印象的だった。
後半はマンフレッド交響曲。弦は16型に拡大。正直、私が苦手とする曲であり、いつも「長いなぁ」というのが感想だったのだが…この日の演奏を聴いて、初めてこの曲がいい曲だと思ったのである!
冒頭の弦楽器は決然とした表情だが、やがてしなやかな響きに変わる。やはり、N響の弦セクションは驚くほど優秀であり、ダイナミックレンジの幅は広い。第1楽章の後半で現れるバスクラのソロがこのうえなく繊細で大拍手ものだ。第4楽章の最後で壮大に鳴り響くパイプオルガン(オリジナルはハーモニウム)は舞台上にコンソールを配置して演奏。
ペトレンコはこの曲を完全に手中に収めているようだが、それもそのはず、彼はこの曲をNAXOSに録音して2009年のグラモフォン賞を受賞しているのだ。1時間かかるこの曲を退屈することなく聴かせる手腕はさすがだ。