ユベール・スダーン指揮東京交響楽団の定期演奏会(サントリーホール)にて、
ブルックナーの交響曲第9番とテ・デウムを、続けて演奏。
その他の出演者は
ソプラノ:澤畑恵美
アルト:小川明子
テノール:高橋 淳
バス:久保和範
合唱:東響コーラス
合唱指揮:安藤常光
今日の演奏も、東京交響楽団のこの上ない繊細な音作りが光る、大変高水準の演奏であった。冒頭の原始霧に続いて第一ヴァイオリンが登場する部分では、あまりのなまめかしさに驚嘆してしまった。とにかく、弦がいい。音に艶がある。管楽器も繊細、トロンボーンの奏するコラールはまさにオルガン的。全体のバランスがとてもよい。トゥッティでも音は濁らず、耳にうるさくない。時として、オーストリアのオケでも聴いているかのような錯覚を覚えてしまうと言ったら、言い過ぎだろうか??
東響、マーラーのように編成が大きくなると少々粗さが目立つのであるが、今日のブルックナーの16型3管編成では、そのような粗さは全くなかった。本日、ライブ録音していたこともあるんだろうが、周到に準備されていたと思われる。
スダーン氏のインタビューに書いてあったが、ウィーン・フィルのコンマス、キュッヘル氏が本日のコンビのブルックナー7番のCDを聴いて、足りないものがあるとすればそれは「より深い音だ」と言ったそうだ。東響の音は以前にはなかったレベルまで洗練されているが、キュッヘル氏が言うところの深い音…コクとでも言おうか、さらに欲しいのはそのような部分である。
さて、本日の演奏は、ブルックナーの遺言通り、未完成の9番の後にテデウムが演奏された。このような演奏会は、ありそうで意外に少ないのだ。個人的には、これらは別々に演奏した方が好きなのであるが…今日の演奏、1~3楽章、つまり第9は割とさらさら、淡々としたテンポで進み、フィナーレのテデウムでクライマックスに達するアプローチであった。よって、未完成の第九を聞き慣れた耳には、特に第3楽章などあっさりしすぎて聞こえる。しかし、テデウムが始まって、フィナーレにテデウムを演奏するのであればこういう解釈はありなんだと思った。テデウムの最後では、思わず胸が熱くなってしまったのである。
東響コーラス、アマチュアだがかなりレベルが高い。Pブロックを埋め尽くすくらいの人数だったが、決して数の馬力だけで歌うことがない。独唱陣も秀逸。
それにしても、在京オケでここまでの演奏を聴けるというのは驚きである。昨日も書いたが、きちんとしたシェフがじっくり時間をかけて育てれば、オケはここまで変わるのである。