ジャン=クリストフ・スピノジの指揮、リナート・シャハムのソプラノで、新日本フィルのサントリー定期。曲目は

モーツァルト作曲 歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』 序曲
モーツァルト作曲 歌劇『フィガロの結婚』より
『恋とはどんなものかしら』
モーツァルト作曲 歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』より
『この心の中の苛立ち、鎮めがたい思いよ』
ハイドン作曲 交響曲第83番ト短調『雌鶏』Hob.I-83
ロッシーニ作曲 歌劇『セヴィリアの理髪師』序曲
ロッシーニ作曲 歌劇『アルジェのイタリア女』より
『むごい運命よ、はかない恋よ』
ロッシーニ作曲 歌劇『セヴィリアの理髪師』より『今の歌声は』
ハイドン作曲

交響曲第82番ハ長調『熊』 Hob. I-82



というもの。前半がモーツァルト、後半がロッシーニのオペラから抜粋、そのあとにハイドンの交響曲を演奏するという意欲的なもの。


スピノジ、とてもいい!気に入ってしまった。躍動感溢れる指揮ぶりから紡ぎ出される音楽は、とても生き生きとしていて清冽。そのうえ、客を笑わせる術に長けていて――こういう感性は、歌姫パトリシア・プティボンや指揮者ロジャー・ノリントンに通じる――定期演奏会でこれだけあちこちで笑い声が起こるというのもなかなかない経験だ。後半のハイドンの「熊」のフィナーレ、「終わりか?」と思わせて拍手がぱらついたらまたリピートが開始。最後の最後で指揮者が客席を振り返ったので「あ、終わった」と思ってみな拍手を始めたら、なんとまた最後の和音をジャン、ジャン、と鳴らす。

この指揮者、若いけれどバロック・古典オペラの分野ではヨーロッパでかなりの活躍をしているらしい。

アルミンクが鍛えた新日本フィルの繊細な音色がまた素晴らしくて、このオケの古典音楽への適性が極めて如実に反映されていたと言える。ハイドンに関しては、昨年のブリュッヘンのハイドンプロジェクトで吸収したものも多かったのでは。指揮が見づらかったか、大きく崩れた場面もあったが、ご愛敬だ。


ソプラノを歌ったシャハム(いかにもイスラエルの名前だ)、私の席(2階Cの2列目)では音が響き過ぎて微細なニュアンスがわからなかったのだが、基本的な技術もしっかりしていて、こちらも芸達者。客席から舞台に上るための階段が2箇所用意されていたが、結局使われなかった。客席で歌うとか、何か演出するつもりがあったのだろうか?


それにしても、サントリーの2階Cブロックは、バランスはもちろんいいのだが私の好みからするとちょっと遠すぎるし、響き過ぎる。下手な演奏を聴くには響いたほうがいいのだが…新日本フィルは、本拠地のすみだトリフォニーで聴くのが、一番いい音がすると思う。